レオンテウス

レオンテウス（Λεοντεύς）

レオンテウスは、古代ギリシアの神話に語られる著名な英雄の一人です。テッサリア地方のラピテース族に属する人物であり、その家系はコローノスを父に、そして高名なカイネウスを祖父に持つとされています。この出自は、彼が神話世界において一定の地位を占める存在であったことを示唆しています。

彼は、スパルタ王妃ヘレネーの並外れた美しさに惹かれた多くの英雄たちと同様に、彼女への求婚者の一人としてその名を連ねています。最終的にヘレネーはスパルタ王メネラオスと結婚しますが、求婚者たちは彼女に危機が迫った際には救援するという誓いを立てており、これが後にトロイア戦争への参戦理由の一つとなります。

トロイア戦争が勃発すると、レオンテウスはアカイア（ギリシア）側の武将として戦場に赴きました。伝承によれば、彼は同じくラピテース族の英雄であるポリュポイテースと共に、テッサリア地方の都市ギュルトーンから40隻もの船団、すなわち多数の兵士を率いてトロイア遠征軍に加わったとされています。ただし、別の系譜や伝承を伝える資料の中には、彼がシキュオーンの軍勢19隻を率いて参戦したとする異説も存在します。

ホメロスによる叙事詩『イーリアス』において、レオンテウスは特に戦闘の重要な局面でその勇猛さを示しています。物語のクライマックスの一つであるアカイア軍の防壁を巡る戦い、具体的には戦闘の第3日目において、彼は盟友ポリュポイテースと共に、トロイア軍がその突破を試みたアカイア軍の防壁に設けられた城門の前に立ち塞がり、激しい抵抗を展開しました。彼は、トロイア軍の武将アシオスが率いる部隊の進撃を効果的に阻止し、防壁の防衛に大きく貢献しました。この激戦の中で、レオンテウスは単独、あるいはポリュポイテースと協力して、ヒッポマコス、アンティパテース、メノーン、イアメノス、オレステースといった複数のトロイアの兵士や下級指揮官を討ち取る活躍を見せています。彼のこのような武功は、『イーリアス』の中でも彼の存在感を際立たせています。

トロイア戦争の期間中、戦場における戦闘のみならず、様々な行事にも参加しています。例えば、アキレウスが親友パトロクロスの死を悼んで開催した葬礼競技においては、レオンテウスは砲丸投げの競技に参加しました。この競技では、ポリュポイテース、強大な力を誇る大アイアース、そして優れた技量を持つエペイオスといった名だたる英雄たちと技を競い合いました。

戦争終盤の決定的な作戦であるトロイの木馬による奇襲にも、レオンテウスは他の選ばれた英雄たちと共に木馬の中に潜み、トロイア城内に侵入した一人であったと伝えられています。この作戦の成功が、長きにわたるトロイア戦争を終結させる決定打となりました。

戦争が終結し、アカイア軍が故郷への帰路についた後も、レオンテウスは一部の英雄たちと行動を共にしています。資料によれば、彼はアムピロコス、カルカース、ポダレイリオス、そして彼の盟友ポリュポイテースと共に、小アジアのイオニア地方に位置する都市コロポーンへと赴いたとされています。これは、多くの英雄たちが困難な帰郷の旅を送る中で、彼が新たな地へ旅立ったことを示唆するエピソードです。

レオンテウスの最期については、複数の伝承が存在し、必ずしも一致していません。ある説では、トロイア戦争における最大の英雄の一人であるヘクトールによって討たれたとも語られています。しかし、『イーリアス』や他の主要な資料には彼の明確な戦死の記述がないため、この説は後代の伝承によるものと考えられます。

なお、神話や伝説の中には、これとは異なる人物として「レオンテウス」という名が登場することもあります。例えば、一説にはテッサリア王イクシーオーンの父がレオンテウスであったとも語られていますが、これはトロイア戦争に参加した上記のレオンテウスとは別の存在である可能性が高いと考えられています。

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