ポルシェ・917

ポルシェ917 (Porsche 917)

ポルシェ917は、1969年から使用されたレーシング専用のスポーツカーで、ポルシェが開発しました。わずか10ヶ月で完成したこのモデルは、メイクス国際選手権に合わせてホモロゲーションを取得するため、クローズドボディの25台が生産されました。これにより、140,000ドイツマルクでの市販化が実現しました。

ポルシェ917は、さまざまなレーシングバリエーションを持つことで知られています。例えば、カナディアン・アメリカン・チャレンジカップ用に開発された917PAスパイダーや917/10スパイダー、さらにターボチャージャーを搭載した917/10K、917/30Kといったモデルは、圧倒的なパフォーマンスでレース界を席巻しました。

初期型の開発経緯

ポルシェは、国際自動車連盟（FIA）が1968年にメイクス国際選手権に関するクラス規定を変更し、排気量の上限を設けたことを受けて、競技における優位性を確保しようとしました。特に、従来の小排気量クラスにおいて一定の成果を上げたポルシェは、この新たな規格を活用し、総合タイトルの獲得を狙っていました。

開発はフェルディナント・ピエヒの指揮の下、1968年7月に始まりました。短期間での開発が求められる中で、ポルシェ908の設計を基にしつつ、エンジン排気量を増やす形で進められました。1969年3月に発表された917は、ホモロゲーション審査を経て翌月に公認されましたが、その際には組み立て精度が低くなることを承知の上で急ピッチで製造されたため、後に精度の再管理が必要となりました。

エンジンとパフォーマンス

917には新設計の空冷V型12気筒エンジン（912型エンジン）が搭載され、初期モデルでは520馬力を発揮していました。このエンジンは、908の水平対向8気筒エンジンに4つの気筒を追加する形で設計され、パワーやトルクの向上が図られました。また、特有のセンターギアを使用したクランクシャフトを採用しており、振動の問題に対処したのです。

シャーシとボディ

917はアルミ合金パイプを使った軽量なスペースフレームシャーシを採用しており、その重量はわずか47キロでした。ドライバーの搭乗位置を前方に移動させ、スペアタイヤの位置も見直すことで、さらに軽量化とバランスの最適化が図られました。また、ボディはFRP製であり、ダウンフォースよりも空気抵抗の軽減に重点が置かれました。最高速度が240km/hを超える場面では、延長テールカウルの装着が推奨されていました。

バリエーションとレース戦績

917は、そのシンプルなデザインから紺碧のボディが施されたモデルから、917Kや917LHなどの変種が登場しました。917Kは、改良型のショートテールモデルに位置付けられ、俊敏性や安定性が大きく向上しました。

1970年には、フルワークス参戦ではなく、外部との提携を経て供給されましたが、917Kは圧倒的な実力を発揮し、メイクス国際選手権で7勝を挙げ、ル・マン24時間レースではポルシェにとっての初優勝を果たします。これ以降も917はカナディアン・アメリカン・チャレンジカップで活躍し続けましたが、1973年にポルシェが燃費レギュレーションの変更により撤退を決定するまで、数々の成果を収めました。

917は、その革新的なエンジニアリングとデザインで、単なるレースカーの域を超え、今なお自動車界に強い足跡を残しています。

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