ポルシェ・935

ポルシェ935：伝説のレーシングカーとその進化

ポルシェ935は、1976年にデビューしたポルシェが製造したレーシングカーです。FIAグループ5（シルエットフォーミュラ）規定に則り開発され、その圧倒的な性能で世界中のレースシーンを席巻しました。

誕生の背景：ターボチャージャー技術の結晶

935誕生の背景には、ポルシェのターボチャージャー技術の進化があります。1970年代初頭、ポルシェ917は5リットルスポーツカーカテゴリーで成功を収めますが、レギュレーション変更によりそのカテゴリーが消滅。その後、アメリカでカナディアン-アメリカン・チャレンジカップに参戦するものの、アメリカ製の高排気量エンジンに対抗できませんでした。そこでポルシェは、ターボチャージャー技術に着目。911ターボを商品化する過程で得た技術を活かし、グループ5規定に沿ったレーシングカーとして935を開発しました。

圧倒的な性能：600馬力超えのモンスターマシン

935は、巨大なターボチャージャーと機械式燃料噴射装置の組み合わせにより、約600馬力を発生。アクセルオフ時のウェイストゲートバルブからのアフターファイアーは、観客を魅了する迫力ある演出となりました。その圧倒的なパワーと、空力特性に優れた独特のボディデザインは、どのレースでも935に匹敵するマシンが存在しないほどの強さを誇りました。ワークスチームだけでなく、多くのプライベーターチームも935を駆り、レースに参戦。カスタマー向けモデルも供給され、世界中のサーキットでその姿を見ることができました。

ワークスモデルの進化：935/76から935/78「モビーディック」まで

ワークスチームが投入した935は、年々進化を続けました。

935/76：デビューイヤーのモデル。特徴的なフラットノーズと巨大なリアウイングが印象的です。
935/77：ツインターボ化され、出力は630馬力にアップ。ボディワークも空力性能の向上を目指し改良されました。
* 935/78「モビーディック」：ロングノーズとロングテールが特徴のモデル。最高速度を追求した設計で、366km/hを記録。ルマン24時間レースでは、ストレートでポルシェ936を追い抜くほどの速さを誇りました。

これらのモデル改良には、ボディワークの空力性能向上、エンジンの出力アップ、冷却システムの改善などが含まれます。リアウイングの形状変更や、インタークーラーの方式変更などは、レギュレーションとの兼ね合いも考慮しながら行われました。

プライベーターによる独自開発：クレマーやヨーストらの挑戦

ワークスチーム以外にも、多くのプライベーターチームが935のカスタマイズや独自開発を行い、レースに参加。中でもクレマー・レーシングは、935 K1、K2、K3、K4と独自のモデルを開発し、ル・マン24時間レース優勝を含む数々の成功を収めました。ヨースト・レーシングも935 Jや935/78-81を開発。アメリカでも、複数のチームが独自の改良型935を開発しました。これらのプライベーターの活躍も、935の人気を高める一因となりました。

2019年の復活：77台限定の市販モデル

2018年、ポルシェは911 GT2 RSをベースとした935の限定市販車を発表。77台限定で生産され、2019年からデリバリーされました。レース参戦を目的としたモデルではなく、935/78をモチーフとしたデザインと、ベースモデルと同じ3.8リッター水平対向6気筒ツインターボエンジンを搭載。現代技術とレトロなデザインが融合した、特別な1台となっています。

偉大な功績と日本の影響

935は、1976年から1984年にかけて、ル・マン24時間レース、デイトナ24時間レースなど、数多くのレースで勝利。特に1977年と1979年のDRMでは、無敗を誇ります。日本ではスーパーカーブーム全盛期に活躍したことから、ラジコン、プラモデル、消しゴムなど、多くの関連商品が発売され、現在も高い人気を誇っています。特にマルティニカラーの1976年型フラットノーズは、多くのファンに愛されています。

結論

ポルシェ935は、高度な技術と大胆なデザイン、そしてプライベーターたちの情熱が凝縮された、まさに伝説のレーシングカーです。その輝かしい戦績と今もなお続く人気は、自動車史に大きな足跡を残しています。

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