ポンプ座

ポンプ座（Antlia）

ポンプ座は、現代の88星座の一つであり、18世紀の中頃に創造された比較的新しい星座です。この星座は、科学実験で用いられる真空ポンプをテーマにしています。ポンプ座には特に目立つ星は少なく、最も明るい恒星である4等星以外は、5等星以下の淡い星々が主を成しています。

主な天体

ポンプ座には、以下の主な天体が存在します。

恒星

• - HD 93083: この恒星は、国際天文学連合（IAU）の100周年記念行事「IAU100 NameExoworlds」でコロンビアに命名権が与えられ、主星として「Macondo」、またその周囲の太陽系外惑星を「Melquíades」と名付けられた星です。

• - α星: この星は4.25等の橙色巨星で、ポンプ座で最も明るい恒星とされています。

星団・星雲・銀河

ポンプ座には銀河も存在します。

• - NGC 2997: 地球から見て45度傾いたスパイラル銀河です。
• - PGC 29194: 別名「ポンプ座矮小銀河（Antlia Dwarf）」として知られており、天の川銀河と同じ局所銀河群に属します。

由来と歴史

ポンプ座の由来は、真空ポンプであり、特に水を汲み上げるタイプではなく、科学的な実験において使用される真空ポンプを基にしています。このビジョンは、フランスの天文学者ラカーユによって具現化されました。彼は、アルゴ座の一部を切り離し、この星座を設けたのです。

ポンプ座の初出は、1756年に公表されたラカーユの星図にあります。この星図では、真空ポンプを表現した星座の絵と共に、「la Machine Pneumatique」というフランス語の名称が見られました。ラカーユの描いたポンプは、17世紀のフランスの発明家ドニ・パパンが使用した単気筒式の真空ポンプでした。

その後、1801年にドイツの天文学者ヨハン・ボーデが作成した星図では、パパンの改良した2気筒式のポンプが描かれ、この星座の学名はイギリスの天文学者ジョン・ハーシェルによって提案されました。彼は1844年の書簡で「Antlia Pneumatica」から「Antlia」と短縮することを提案し、1845年にこれが正式に採択されました。

1922年には、IAUの設立総会で現行の88星座が定められ、この中にポンプ座が選ばれ、正式名称、「Antlia」と略称「Ant」が認定されました。新たに設けられた星座であるため、特別な神話や伝承は存在しません。

ただし、ポンプ座の由来について「ロバート・ボイルがオットー・フォン・ゲーリケの真空ポンプを改良して記念として設定した」という説が流布されましたが、これは誤りです。

呼称と方言

日本では、星座名が初めて文献に登場した際、当初「排氣器」という訳語が用いられていました。この訳は、1910年に日本天文学会の『天文月報』で確認され、以降、「排氣器」という表記が続きました。しかし、1952年には「ポンプ」の名称に変更され、現在の呼称が定着しました。他にも、天文同好会の山本一清らは「空気ポンプ」と訳していた時期もあり、そのバリエーションが見られる星座名となっています。

もう一度検索