ポンペイ、ヘルクラネウム及びトッレ・アンヌンツィアータの遺跡地域
ポンペイ、ヘルクラネウム、トッレ・アンヌンツィアータの遺跡地域は、1997年にユネスコの世界遺産に登録された、イタリアを代表する文化遺産です。この地域は、西暦79年のヴェスヴィオ火山の大噴火によって埋没したポンペイとヘルクラネウムの都市遺跡、そしてトッレ・アンヌンツィアータのヴィラ遺跡で構成されており、当時のローマ社会の生活様式を色濃く残しています。
ポンペイは紀元前6世紀に建設され、紀元前80年頃にローマの支配下に入りました。港町として発展し、地中海貿易の拠点として栄え、ヴェスヴィオ山麓ではブドウ栽培やワイン醸造が盛んに行われていました。しかし、1世紀に入ると地震が頻発するようになり、西暦62年には大地震が地域を襲いました。この地震はヴェスヴィオ火山の活動と関連があったと考えられていますが、当時人々はその後の噴火を予期していませんでした。そして、西暦79年8月24日、ヴェスヴィオ山は再び大噴火を起こし、ポンペイを含む周辺の都市は火山灰や火砕流によって埋没してしまいました。この噴火によって、大プリニウスも命を落としたとされています。
これらの遺跡は、16世紀に建築家ドメニコ・フォンターナによって一部が発見されましたが、本格的な発掘調査は18世紀になってから始まりました。1748年、ヘルクラネウムの遺跡が発見されたことをきっかけに、ブルボン家のカルロ王の主導でポンペイの発掘調査も開始されました。当初は、貴金属などの価値のある出土品の回収が目的でしたが、次第に遺跡の歴史的価値が認識されるようになり、慎重な発掘方法へと変化していきました。19世紀には、考古学者ジュゼッペ・フィオレッリによって、火山灰土中の空洞に石膏を流し込むことで人々の最期の姿を復元する手法が導入されました。また、遺跡を区域とブロックに分割し、個々の建造物に識別番号を付与するシステムも考案され、現代の発掘調査にも利用されています。
ポンペイ
ポンペイの遺跡は、スタビア門から始まるスタビア通りを中心に、9つの地区に区分されています。
第I地区: 「メナンドロスの家」や「ステファヌスの縮絨工房」など、当時の生活や産業を物語る建物が多く残っています。
第II地区: 紀元前80年に建てられたアンフィテアトルムや大運動場があります。
第V地区: 「銀婚式の家」が出土しています。
第VI地区: 「ヴェッティの家」、「アモリーニ・ドラーティの家」、「ファウノの家」など、美しいフレスコ画やモザイク画が残る富裕層の邸宅が多数発見されています。
第VII地区: ユピテル神殿、アポロ神殿、ウェスパシアヌス神殿などの神殿群や、フォルム、市場、浴場などの公共施設が集まっています。
第VIII地区: イシス神殿、大劇場、小劇場などが残っています。
秘儀荘 (ポンペイ)
ポンペイ市壁外にあるこの館は、「ディオニュソス秘儀」を描いた壁画で有名です。この壁画は、当時の宗教儀式を描いたものと考えられ、「ポンペイの赤」と呼ばれる鮮やかな色彩が特徴的です。
トッレ・アンヌンツィアータのヴィラ
ポンペイから約2.5km離れたこの場所には、ネロ帝の妻ポッパエアが所有していたと考えられている「オプロンティスのヴィラ」があります。美しいフレスコ画が数多く残されています。
ヘルクラネウム
ポンペイの近くにあるヘルクラネウムは、高級保養地として栄えた都市で、ポンペイとは異なる特徴を持っています。火砕流によって埋没したため、木材や紙といった有機物が腐らずに残っており、当時の生活様式をより詳細に知ることができます。アウグスティヌス帝時代に建設された共同浴場、「宿屋の家」、「ネプトゥヌスとアンフィトリテの家」、「鹿の家」などが見どころです。
パピリの館 (ヘルクラネウム)
ヘルクラネウム郊外にある壮大なヴィラです。世界遺産推薦の時点でも発掘作業が継続していました。
ヘルクラネウムの劇場
2000人収容の劇場で、都市遺跡の中心部からやや離れた場所にあります。
発掘された遺跡は、観光資源として利用される一方で、その保存と管理が課題となっています。過去の誤った発掘調査や、修復・保全を行う人的リソースの不足、年間200万人を超える観光客の受け入れなどによって、遺跡の完全性が失われつつありました。2010年には、ポンペイで「剣闘士の家」や「道徳家の家」が倒壊したことを受けて、世界遺産委員会はイタリア政府に包括的な管理計画の策定を勧告しました。その結果、2013年には、欧州委員会が資金提供した「グレート・ポンペイ・プロジェクト」が立ち上げられ、遺跡の保全状況は大幅に改善されました。
1997年、ポンペイ、ヘルクラネウム、トッレ・アンヌンツィアータの遺跡地域は、その顕著な普遍的価値が認められ、ユネスコの世界遺産に登録されました。登録基準としては、(3)「現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠」、(4)「人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例」、(5)「ある文化（または複数の文化）を代表する伝統的集落、あるいは陸上ないし海上利用の際立った例」が適用されています。
これらの遺跡は、古代ローマ時代の社会や日常生活、文化や技術を今に伝える貴重な遺産であり、世界中の人々がその歴史的価値を共有し、未来に伝えていくことが重要です。
歴史
ポンペイは紀元前6世紀に建設され、紀元前80年頃にローマの支配下に入りました。港町として発展し、地中海貿易の拠点として栄え、ヴェスヴィオ山麓ではブドウ栽培やワイン醸造が盛んに行われていました。しかし、1世紀に入ると地震が頻発するようになり、西暦62年には大地震が地域を襲いました。この地震はヴェスヴィオ火山の活動と関連があったと考えられていますが、当時人々はその後の噴火を予期していませんでした。そして、西暦79年8月24日、ヴェスヴィオ山は再び大噴火を起こし、ポンペイを含む周辺の都市は火山灰や火砕流によって埋没してしまいました。この噴火によって、大プリニウスも命を落としたとされています。
これらの遺跡は、16世紀に建築家ドメニコ・フォンターナによって一部が発見されましたが、本格的な発掘調査は18世紀になってから始まりました。1748年、ヘルクラネウムの遺跡が発見されたことをきっかけに、ブルボン家のカルロ王の主導でポンペイの発掘調査も開始されました。当初は、貴金属などの価値のある出土品の回収が目的でしたが、次第に遺跡の歴史的価値が認識されるようになり、慎重な発掘方法へと変化していきました。19世紀には、考古学者ジュゼッペ・フィオレッリによって、火山灰土中の空洞に石膏を流し込むことで人々の最期の姿を復元する手法が導入されました。また、遺跡を区域とブロックに分割し、個々の建造物に識別番号を付与するシステムも考案され、現代の発掘調査にも利用されています。
発掘された主な遺跡
ポンペイ
ポンペイの遺跡は、スタビア門から始まるスタビア通りを中心に、9つの地区に区分されています。
第I地区: 「メナンドロスの家」や「ステファヌスの縮絨工房」など、当時の生活や産業を物語る建物が多く残っています。
第II地区: 紀元前80年に建てられたアンフィテアトルムや大運動場があります。
第V地区: 「銀婚式の家」が出土しています。
第VI地区: 「ヴェッティの家」、「アモリーニ・ドラーティの家」、「ファウノの家」など、美しいフレスコ画やモザイク画が残る富裕層の邸宅が多数発見されています。
第VII地区: ユピテル神殿、アポロ神殿、ウェスパシアヌス神殿などの神殿群や、フォルム、市場、浴場などの公共施設が集まっています。
第VIII地区: イシス神殿、大劇場、小劇場などが残っています。
秘儀荘 (ポンペイ)
ポンペイ市壁外にあるこの館は、「ディオニュソス秘儀」を描いた壁画で有名です。この壁画は、当時の宗教儀式を描いたものと考えられ、「ポンペイの赤」と呼ばれる鮮やかな色彩が特徴的です。
トッレ・アンヌンツィアータのヴィラ
ポンペイから約2.5km離れたこの場所には、ネロ帝の妻ポッパエアが所有していたと考えられている「オプロンティスのヴィラ」があります。美しいフレスコ画が数多く残されています。
ヘルクラネウム
ポンペイの近くにあるヘルクラネウムは、高級保養地として栄えた都市で、ポンペイとは異なる特徴を持っています。火砕流によって埋没したため、木材や紙といった有機物が腐らずに残っており、当時の生活様式をより詳細に知ることができます。アウグスティヌス帝時代に建設された共同浴場、「宿屋の家」、「ネプトゥヌスとアンフィトリテの家」、「鹿の家」などが見どころです。
パピリの館 (ヘルクラネウム)
ヘルクラネウム郊外にある壮大なヴィラです。世界遺産推薦の時点でも発掘作業が継続していました。
ヘルクラネウムの劇場
2000人収容の劇場で、都市遺跡の中心部からやや離れた場所にあります。
遺跡の保護と管理
発掘された遺跡は、観光資源として利用される一方で、その保存と管理が課題となっています。過去の誤った発掘調査や、修復・保全を行う人的リソースの不足、年間200万人を超える観光客の受け入れなどによって、遺跡の完全性が失われつつありました。2010年には、ポンペイで「剣闘士の家」や「道徳家の家」が倒壊したことを受けて、世界遺産委員会はイタリア政府に包括的な管理計画の策定を勧告しました。その結果、2013年には、欧州委員会が資金提供した「グレート・ポンペイ・プロジェクト」が立ち上げられ、遺跡の保全状況は大幅に改善されました。
世界遺産としての登録
1997年、ポンペイ、ヘルクラネウム、トッレ・アンヌンツィアータの遺跡地域は、その顕著な普遍的価値が認められ、ユネスコの世界遺産に登録されました。登録基準としては、(3)「現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠」、(4)「人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例」、(5)「ある文化（または複数の文化）を代表する伝統的集落、あるいは陸上ないし海上利用の際立った例」が適用されています。
これらの遺跡は、古代ローマ時代の社会や日常生活、文化や技術を今に伝える貴重な遺産であり、世界中の人々がその歴史的価値を共有し、未来に伝えていくことが重要です。
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