ポール・マグロワール

ポール・ウジェーヌ・マグロワール（1907年7月19日 - 2001年7月12日）は、通称ボン・パパとして知られ、1950年から1956年までハイチを統治した軍事政権の指導者でした。

生涯と経歴

マグロワールは将軍の息子として生まれ、自身も1930年に陸軍に入隊しました。彼は軍内で急速に昇進し、1944年には首都ポルトープランスの警察署長に任命されました。1946年には、当時の大統領エリ・レスコーを打倒するクーデターに参加し、その後の政権を担ったデュマルセ・エスティメ大統領の下で重要な地位を占めました。

1950年、エスティメ大統領が自身の任期延長を企図した際、マグロワールは彼を追放し、地域のエリート層からの支持を得て政権を掌握しました。このクーデターは、マグロワールがハイチの政治的リーダーシップを確立する上で決定的な瞬間となりました。

統治時代

マグロワールが大統領として統治した時代、ハイチは観光地として著しい発展を遂げ、欧米各地からの観光客を惹きつけました。彼の反共政策は、アメリカ合衆国政府からの支持を得る要因となりました。また、コーヒー輸出による収入を都市のインフラ整備に投資し、道路、公共施設、ダムなどの建設を積極的に進めました。さらに、女性参政権の導入を実現するなど、社会的な改革も推進しました。

マグロワールは、その派手な社交生活でも知られており、数多くのパーティー、社交行事、儀式などを開催し、国内外の要人との関係を深めました。これらの活動は、彼のリーダーシップを象徴するものであり、ハイチの国際的な地位を高める一助となりました。

人気の失墜と亡命

しかし、1954年にハイチを襲ったハリケーン・ヘイゼルによる壊滅的な被害と、その救援基金の盗難事件が発覚すると、マグロワールの人気は急速に低下しました。1956年には大統領任期の終了をめぐる論争が激化し、ストライキや抗議デモが頻発する事態となりました。最終的に、マグロワールは国外への亡命を余儀なくされました。

その後、大統領となったフランソワ・デュヴァリエは、マグロワールのハイチ市民権を剥奪しました。これにより、彼は長期間にわたり故郷への帰還を阻まれることとなりました。

帰還と晩年

1986年、ジャン＝クロード・デュヴァリエ（ベビー・ドク）が失脚すると、マグロワールは長年居住していたニューヨークからハイチに帰国しました。帰国後、彼は1988年に非公式な陸軍顧問となり、再びハイチの政治に関与しました。2001年7月12日、マグロワールは生涯を閉じました。私生活では、ヨレット・ルコンテと長年連れ添い、1981年に彼女が亡くなるまで深い絆で結ばれていました。

マグロワールの生涯は、ハイチの政治的変動と社会の変遷を反映しています。彼のリーダーシップは、ハイチの観光産業の発展やインフラ整備に貢献した一方で、その強権的な統治手法は批判も受けました。彼の遺産は、今日でもハイチ社会に影響を与え続けています。

関連文献
Nicholls, David (1979). From Dessalines to Duvalier: Race, Colour, and National Independence in Haiti. ISBN 978-0-8135-2240-1
Trouillot, Michel-Rolph (1989). Haiti: State Against Nation. Monthly Review Press. ISBN 978-0-85345-755-8

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