ポール＝アンリ・ティリ・ドルバック

ポール＝アンリ・ティリ・ドルバック男爵の生涯と業績

ポール＝アンリ・ティリ・ドルバック男爵（Paul-Henri Thiry, baron d'Holbach）は、1723年に現在のドイツにあたるプファルツ選帝侯領エデスハイムで生まれました。裕福なワイン農家の家庭に育った彼は、幼少の頃からフランス語で教育を受けました。後に政略的に海外に移住し、1749年からパリに定住します。その後、彼はフランス国籍を取得し、フランス人としての生涯を送りました。

ドルバックは二度の結婚を経て、四人の子供をもうけました。彼はデーヌ家の財産を背景に、自然科学や哲学の書物を広く研究し、大いに知識を深めていきました。また、彼は多くの著名な知識人たちと関わりを持ち、毎週木曜日と日曜日にサロンを開催しました。サロンには、ジョルジュ＝ルイ・ルクレール・ド・ビュフォンやジャン＝ジャック・ルソーなどの当時の著名人が集まり、活発な議論が交わされていました。彼のサロンでの活動は、啓蒙思想が広がる重要な場となりました。

ドルバックは1751年からディドロとダランベールの『百科全書』の編纂に参加し、多くの記事を執筆しました。彼の執筆は主に無神論、唯物論、運命論をテーマにしており、当時の宗教に対して批判的でした。特に著名な著作『自然の体系』では、宗教的な観念を排除して科学的な観点から宇宙を描き、道徳を自然的原理に基づかせることを目指しました。彼の思想は、当時の宗教の束縛から解放された理性的な人間という視点を強調しています。

著作活動については、彼の作品の多くが匿名または偽名で出版され、特にキリスト教に対する批判が色濃くなされました。彼は自身の思想を広めるために、変名を用いることが多く、歴史的にも重要な役割を果たしました。

1770年には『自然の体系』を発表し、その後大きな波紋を呼びました。政府はこの書物を焚書するよう命じ、ドルバックに対して多くの反論書が出版されることになります。しかし、彼の思想は啓蒙思想の一端を担い、後の無神論的思想の基礎を築くものとなりました。さらに、彼の作品へはディドロが注釈を付けるなど、互いに影響し合いながら新たな思想潮流を生み出していきました。

1789年1月、ドルバックはパリで亡くなりました。彼の死は、フランス革命の起こる数か月前であり、彼自身の思想にも大きな影響を与えた時代の変化に直面していました。彼の遺体はサン・ロック教会で埋葬されましたが、後に墓石がないまま持ち去られてしまったとされています。

彼の著作は50冊以上に及び、哲学書やキリスト教批判にとどまらず、化学や法学、政治学に関する作品も含まれています。特に『キリスト教暴露』や『自然の体系』など、ドルバックの思想は今もなお多くの人々に影響を与え続けています。ルソーが著書『新エロイーズ』でドルバックをモデルにしたともいわれており、彼の存在がどれほどの影響力を持っていたかを物語っています。ドルバックは啓蒙時代の重要な人々の一人であり、彼の思想は現代においても relevanteです。

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