ABCレコード

ABCレコード：アメリカ音楽史に名を刻んだレコード会社の軌跡

ABCレコード（ABC Records, Inc）は、1955年から1979年までアメリカで活動したレコード会社であり、そのレコードレーベル名でもあります。当初はABCパラマウント・レコードとして設立されましたが、1966年にABCレコードへと名称を変更しました。

設立と成長

1955年、ABCパラマウント・レコードは、ABC（当時、パラマウント映画と合併しABCパラマウントとなっていた）の子会社として誕生しました。1950年代後半には、若き日のポップスター、ポール・アンカが数々のヒット曲を連発し、ABCレコードの看板スターとしてその名を広めました。その後、数々の中小レーベルを買収し、傘下に収めることで、ABCレコードはアメリカの主要レコード会社としての地位を確立していきました。

ジャズへの貢献：インパルス・レコード

1960年、ABCレコードはジャズ専門レーベルであるインパルス・レコードを設立しました。アトランティック・レコードから移籍したジョン・コルトレーンは、インパルスで自身の音楽キャリアの最盛期を迎えました。しかし、1967年にコルトレーンが亡くなると、インパルス・レコードも徐々に勢いを失っていきました。

フォークロックと多様な音楽性の追求

1966年にABCレコードに改称したこの年、ママス&パパスをはじめとするフォークロックのスターを多数擁するダンヒル・レコードを買収しました。1970年代に入ると、スリー・ドッグ・ナイトやスティーリー・ダンといったアーティストがヒットを連発し、ABCレコードの隆盛を支えました。また、1974年にはブルース専門レーベルのブルーサム・レコードを買収するなど、多様な音楽ジャンルへの展開を積極的に行いました。

MCAによる買収と終焉

しかし、1979年、ABCレコードはMCAレコード（現在のユニバーサル・ミュージック）に買収され、レコード会社およびレーベルとしてのABCレコードの歴史は幕を閉じました。

日本での発売元の変遷

ABCレコードの音源は、日本での発売元が頻繁に変わったことでも知られています。2000年になってようやく、現在のユニバーサル・ミュージックに落ち着きました。以下に、その遍歴を示します。

ABC時代
キングレコード (1958年～1970年頃)
東芝EMI (1970年頃～1976年)
日本コロムビア (1976年～1979年、MCA編入前まで)
MCA時代
ビクター音楽産業 (1979年～1984年)
ワーナー・パイオニア (1984年～1989年)
パイオニアLDC (1989年～1992年)
MCAビクター(1992年～1996年)
ユニバーサル時代
ユニバーサル・ビクター (1996年～2000年)
ユニバーサル・ミュージック (2000年～現在)

主なレーベル

ABCパラマウント (ABC-Paramount)
ABC (ABC)
アプト (Apt)
インパルス (Impulse)
ブルースウェイ (Bluesway)
ダンヒル (Dunhill)
プローブ (Probe)
ウエストミンスター (Westminster)
ドット (Dot)
バックビート (Back Beat)

主な所属アーティスト

ポール・アンカ
インプレッションズ
B.B.キング
ジム・クロウチ
ジョン・コルトレーン
オーネット・コールマン
スティーリー・ダン
スリー・ドッグ・ナイト
レイ・チャールズ
ファッツ・ドミノ
フレディ・ハバード
フィフス・ディメンション
フォー・トップス
ジョン・リー・フッカー
アート・ブレイキー
ポコ
ジェイムス・ギャング
ママス&パパス
チャールズ・ミンガス
クリフ・リチャード
ソニー・ロリンズ
ハンス・クナッパーツブッシュ
ビヴァリー・シルズ
エミット・ローズ

ABCレコードは、その短い活動期間にもかかわらず、アメリカ音楽史に大きな足跡を残しました。多様なジャンルの音楽を積極的に展開し、数々の才能あるアーティストを世に送り出したABCレコードの功績は、今もなお語り継がれています。

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