マイケル・トールボット

マイケル・トールボット

マイケル・（オーウェン・）トールボット（Michael (Owen) Talbot）は、1943年1月4日に英国のルートンで生まれた、現代を代表するイギリスの音楽学者であり作曲家です。特に17世紀から18世紀にかけてのイタリア・バロック音楽を専門とし、中でもアントニオ・ヴィヴァルディ研究においては世界的な権威として広く認められています。

略歴と学術的キャリア

1943年にロンドン近郊のルートンで生を受けたトールボットは、音楽の道を志し、奨学金を得て王立音楽アカデミーで学びました。その後、王立音楽大学を経てケンブリッジ大学に進学し、1968年に「トマゾ・アルビノーニの器楽音楽」に関する研究で学位を取得しました。同年、彼はリヴァプール大学の講師に着任し、その後のキャリアの大部分をこの地で過ごすことになります。1986年には同大学の音楽学教授に昇進し、2002年までその職を務め、2003年からは名誉教授の称号を授与されています。

主要な研究業績

トールボットのキャリアにおいて、最も特筆すべき業績の一つは、1973年にマンチェスター市立図書館の蔵書の中からアントニオ・ヴィヴァルディの「マンチェスター・ソナタ」を発見したことです。この発見は、ヴィヴァルディの作品研究に新たな光を当てました。

彼は長年にわたりヴィヴァルディに関する優れた研究を数多く発表しており、その第一人者としての地位を確立しています。1978年にはヴィヴァルディ生誕300年を記念して初の著作Vivaldiを出版し、音楽学界から高い評価を得ました。この著作は改訂を重ね、版を異にして現在も重要な文献となっています。

また、彼は音楽研究における最も権威ある文献の一つであるニューグローブ世界音楽大事典において、ヴィヴァルディの項目を含む、主要なバロック作曲家（アルビノーニ、ベネデット・マルチェッロ、アレッサンドロ・マルチェッロなど）に関する重要な項目の執筆を担当しました。その知見は、フィリップス、デッカ、ポリドール、ナイーヴといった主要なレーベルが発行するヴィヴァルディ作品の録音媒体の解説書にも頻繁に採用されています。

ヴィヴァルディ研究に加え、トールボットはアルビノーニやマルチェッロ兄弟など、他のイタリア・バロック作曲家に関するモノグラフも執筆しており、この時代の音楽全般に関する深い知識と洞察を示しています。学術雑誌Studi vivaldianiの編集者としても活動し、ヴィヴァルディ研究の発展に貢献しています。

受賞と栄誉

その長年の学術的功績は国内外で高く評価されています。1980年には、イタリア政府よりイタリア共和国功労勲章（カヴァリエーレ）を授与されました。また、1989年には国際音楽資料情報協会からG・B・オールドマン賞を、1999年にはイギリス学士院からセレナメダルを受賞しています。1990年から1992年にかけては、イギリス学士院のフェロー（研究リーダー）としても活動しました。彼の名前は、国際的な人物名鑑であるMarquis Who's Whoにも、注目すべき音楽学者、教育者として登録されています。

作曲活動

音楽学者としての輝かしいキャリアに加え、トールボットは作曲家としても活動しています。特に2005年頃からは、歴史的見地に立った独自の作曲スタイルを探求しており、ネオ=バロック作曲家協会「Vox Sæculorum」のメンバーとしても名を連ねています。彼の作品には、チェンバロのための協奏曲や様々な楽器のためのソナタや協奏曲などがあります。

主な著作、論文、音楽作品（抜粋）

著作

Antonio Vivaldi The Manchester Violin Sonatas (A-R Editions 1976)
Vivaldi's 'Manchester' Sonatas (Cambridge University Press 1977)
Vivaldi (London 1978, revised editions 1984, 1993, 2000)
Albinoni. Life and work (Adliswil / CH 1980)
Tomaso Albinoni: The Venetian Composer and His World (Oxford 1990, revised 1994)
The Musical Work: Reality or Invention? （Liverpool University Press 2000）
The Vivaldi Compendium (Woodbridge 2011)

論文

“Vivaldi's 'Manchester' Sonatas”, Proceedings of the Royal Musical Association, Vol. 104 (1977 - 1978)
“The Italian concerto in the late seventeenth and early eighteenth centuries”, In The Cambridge Companion to the Concerto (2005)
“Giovanni Battista Vivaldi copies music by Telemann: New light on the genesis of Antonio Vivaldi’s chamber concertos”, Studi vivaldiani (2015)

音楽作品

4 concertos for solo harpsichord op.3
6 quartets for various instruments and basso continuo op.6
6 18th century style concertos for strings and basso continuo op.7
Fuga ardua for solo bassoon op.9
6 sonatas for recorder and harpsichord op.12*

マイケル・トールボットは、その広範な研究、重要な発見、そして深い学識を通じて、17世紀および18世紀のイタリア音楽、特にヴィヴァルディ像の確立と理解に不可欠な貢献を果たし続けています。

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