マイケル・ヒックス・ビーチ (初代セント・アルドウィン伯爵)

初代セント・アルドウィン伯爵マイケル・エドワード・ヒックス・ビーチ

マイケル・エドワード・ヒックス・ビーチ（1837年10月23日 - 1916年4月30日）は、イギリスの政治家であり、貴族でした。ヴィクトリア朝後期の保守党政権において、重要な閣僚職を歴任しました。

生涯

1837年、ロンドンのセント・ジョージ・ハノーヴァー・スクウェアで、準男爵サー・マイケル・ヒックス・ビーチの息子として生まれました。イートン校を経てオックスフォード大学クライスト・チャーチで学びました。

1864年から1885年までイースト・グロスターシャー選挙区、その後1885年から1906年に叙爵されるまでブリストル・ウェスト選挙区から庶民院議員として選出されました。保守党に所属し、政界で重要な役割を果たしました。

政治家として

第二次ディズレーリ内閣では、当初アイルランド担当大臣として入閣しました。しかし、1878年には露土戦争への対応をめぐり、ディズレーリの親トルコ政策に反対し辞職したカーナーヴォン伯爵の後任として、植民地大臣に就任しました。ヒックス・ビーチは徹底した反ロシア派であり、南アフリカ情勢への関心は薄かったとされます。また、当時の通信技術の制約もあり、英領ナタール行政府高等弁務官サー・ヘンリー・バートル・フレアとの意思疎通が円滑ではありませんでした。フレアが再三求めた対ズールー族強硬策には反対しましたが、最終的にフレアは本国の許可なくズールー戦争を開始し、ズールー族を征服しました。

1885年から1886年の第一次ソールズベリー侯爵内閣では、財務大臣兼庶民院院内総務として入閣しました。これは、それまで庶民院院内総務だったサー・スタッフォード・ノースコートがイデスリー伯爵となり貴族院へ移籍したことに伴うものでした。ソールズベリー侯爵は、保守党の党首としてヒックス・ビーチを後任に指名しました。

1886年から1892年の第二次ソールズベリー侯爵内閣では、アイルランド担当大臣や通商大臣を歴任しました。

1895年から1902年の第三次ソールズベリー侯爵内閣では、財務大臣として入閣しました。19世紀末、中国分割をめぐりロシア帝国が満洲・北中国に支配権を確立し、自国の独占市場（勢力圏）としようとした際、ヒックス・ビーチは門戸開放を積極的に訴え、ロシア帝国主義の抑制を図りました。1898年1月には、「イギリス政府はどのような犠牲を払っても、必要とあれば戦争をしてでも門戸は閉鎖されてはならないと固く決心している」と演説しました。

1902年に終結した第二次ボーア戦争は、予想外に戦費が膨大となり、ヒックス・ビーチはこれに対応するため、1902年6月に所得税の増税、印紙税の導入、そして少額の輸入穀物関税の導入を含む予算を可決させました。輸入穀物関税はパンの値上がりにつながるとして国民の不評を買い、保守党内からも労働者票の離反を招くと反対の声が上がりましたが、ヒックス・ビーチは「砂糖や煙草に課税する方が貧困者にとって負担が大きく、この程度の穀物関税ではパンの価格は高騰しない」と反論しました。ソールズベリー侯爵が1902年7月に首相を辞任し政界を引退すると、ヒックス・ビーチも政界の第一線から退き、財務大臣を辞任しました。

その後、保守党政権はヒックス・ビーチが残した穀物関税をめぐり、植民地大臣ジョゼフ・チェンバレンら関税改革派（保護貿易派）と財務大臣チャールズ・リッチーら自由貿易維持派に分裂しました。ヒックス・ビーチは退任後、自由貿易維持派として活動し、デヴォンシャー公爵を総裁とする「統一党無関税食糧連盟」の結成に尽力しました。

1906年にセント・アルドウィン子爵に叙せられ貴族院へ移籍し、1915年にはセント・アルドウィン伯爵とケニントン子爵に叙せられました。1916年4月30日にロンドンで死去、78歳でした。

人物像

国教会と地主の代弁者であり、徹底した保守主義者でした。また、口が悪く辛辣であったため、「ブラック・マイケル」という異名で知られていました。

家族

1874年にルーシー・フォーテスキュー（第3代フォーテスキュー伯爵の娘）と結婚し、4人の子供をもうけました。

長女：エリナー・ルーシー (1875年-1960年)
長男：ケニントン子爵マイケル (1877年-1916年) - 第一次世界大戦で戦死。彼の息子が爵位を継承。
次女：スーザン (1878年-?)
三女：ヴィクトリア (1879年-?)

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