マイバッハ・57/62

マイバッハ 57/62：究極のラグジュアリーセダンの軌跡

ダイムラークライスラーAG（現メルセデス・ベンツ・グループ）は、1997年の東京モーターショーで発表したコンセプトカーを皮切りに、伝説的なブランド「マイバッハ」を復活させました。そして2002年、その復活の狼煙を上げたのが、フラッグシップモデルであるマイバッハ 57と62です。この2モデルは、Fセグメントに属し、圧倒的な存在感を放つ高級車として君臨しました。

卓越した技術と比類なき豪華さ

57と62は、高度な技術と厳選された素材をふんだんに使用していました。車体剛性の高さは既存のSクラスを凌駕し、優れた安定性と静粛性（NVH性能）を実現。内装はまさにオーダーメイドの世界で、大理石を化粧板に用いることも可能でした。その価格も、市販車の中でもトップクラスに位置していました。車名の「57」と「62」は、富裕層に人気のヨットにならって車体の全長（57は5,723mm、62は6,165mm）に由来しています。

パワフルな心臓部には、5,513ccのV型12気筒ツインターボエンジン（M285型）を搭載。最高出力550ps、最大トルク91.8kgmを発生し、5速ATと後輪駆動システムにより、滑らかな走りを提供しました。

スペシャルモデルとコンセプトカー

2005年には、さらにパワフルなエンジンと専用内外装を備えたスペシャルモデル「57S」と「62S」が登場。排気量5,980ccのV型12気筒ツインターボエンジンは、最高出力612ps、最大トルク1,000Nmを誇りました。

2006年には、2ドアクーペのコンセプトカー「マイバッハ・エクセレロ」を発表しましたが、市販化には至りませんでした。ロールスロイスやベントレーがクーペやコンバーチブルを展開する中、マイバッハはショーファードリブン（運転手付き）を前提としたリムジンに特化していました。

2007年には、62Sをベースにした「62 Landaulet」を発表。後部座席側のみ開閉可能なソフトトップと電動パーティションを備えた、特別なランドレーモデルでした。限定生産され、価格は62Sの倍以上という高価格帯でした。

2009年には、戦前のモデルにオマージュを捧げた「ツェッペリン」モデルを限定100台で発売。専用内外装と最高出力640psのエンジンを搭載しました。

さらに、ドイツのコーチビルダー、ザナテックは57Sをベースにしたクーペ「Crusiero Coupe」を発表しましたが、コーチビルダーの破産により限定8台の生産にとどまりました。

ブランド廃止と日本での販売

販売不振を理由に、2011年に2013年までのマイバッハブランド廃止が発表されました。

日本市場では、東京都港区六本木のメルセデス・ベンツ直営ショールームで販売されました。予約制で、専任の販売員が1日1組のみ対応する、特別な販売体制でした。車両本体価格に加え、内装材や外板色など、多様なカスタマイズオプションが用意されていました。

発売当初の価格は約4,100万円からでしたが、オーダーメイドプランでは1億円を超えることもありました。右ハンドル仕様も選択可能で、アフターサービスは専用センターと全国のメルセデス・ベンツ指定工場が対応していました。

2010年半ばまでに全世界で2,600台、日本でも150台以上を販売。2006年の日本での年間販売台数は18台でした。

マイバッハ 57/62は、究極のラグジュアリーを追求した、短いながらも輝かしい歴史を持つモデルでした。その存在感は、今もなお多くの自動車ファンを魅了し続けています。

もう一度検索