『マイ・バック・ページ』について
『マイ・バック・ページ』は、日本の
評論家である
川本三郎が
1968年から
1972年にかけての出来事を記した回想録を基にして作られた
映画です。この作品は、2011年に公開され、
ボブ・ディランの楽曲「マイ・バック・ページズ」(My Back Pages)からその名が取られました。
書籍の概要
川本三郎の著作は、その時代の政治的・社会的背景を描写しています。彼は『
週刊朝日』や『
朝日ジャーナル』の記者として、
新左翼運動や様々な反戦活動を取材し、当時出会った人々とのエピソードを交えつつ、記憶を紡いでいます。
本書は、前半で安田講堂事件や
三里塚闘争、ベトナム反戦運動といった歴史的瞬間、そしてそれらの活動に対する川本自身の思いを語り、後半では活動家の青年Kとの出会いを通じて、彼自身の避けられない運命、つまり
朝霞自衛官殺害事件の影響を受けて逮捕され、懲戒免職に至る経緯を描いています。この回想録は
1986年から
1987年にかけて雑誌『SWITCH』に連載され、
1988年に単行本として出版された後、一度は絶版となりました。しかし、
2010年に
映画化が決まり再刊されました。
映画の制作背景
映画版は2007年にプロデューサー
根岸洋之によって原作が監督の
山下敦弘と脚本の
向井康介に引き継がれ、3年の歳月をかけて脚本が完成しました。この二人は、作品の舞台となる1960年代にはまだ生まれていない世代であり、過去の事象をどのように再現するかが大きな課題となりました。撮影には通常の35mmフィルムではなく、16mmフィルムが使用され、映像の質感に独特のざらつきを与えています。キャッチコピーは「その時代、暴力で世界は変えられると信じていた」と掲げられています。
物語の展開
物語は1969年、主人公の沢田が新米記者として
新左翼運動を取材するところから始まります。彼はジャーナリストとしての仕事と、活動家たちへの共感との間で苦悩し続けます。
1970年には大学のクラスメートとの激しい議論を通じて、彼の内面的な葛藤がさらに深まります。さらに、活動家の梅山が登場し、彼の思考は新たな方向へと引き込まれていくのです。
物語は、梅山が「赤邦軍」という組織を作り、自衛隊襲撃の計画を立てるまで進行します。沢田は、この計画を独占取材し希望を抱くものの、社会的なプレッシャーや内部の対立により、事態は思わぬ方向に転がっていきます。最終的に彼は、自身が追っていたニュースの真相に直面し、人生の選択を迫られることとなります。
キャストと受賞歴
映画では、沢田を
妻夫木聡が、梅山を
松山ケンイチが演じています。その他のキャストも豪華で、物語に緊張感を与えています。また、
映画は第85回
キネマ旬報ベスト・テンで第9位を獲得し、新人女優賞など、多くの賞を受賞しました。
この作品は、ただの歴史的な記録に留まらず、当時の社会情勢や人々の思想をリアルに描写し、観る者に深い思索を促すものです。