マウロ・ジュリアーニ

マウロ・ジュゼッペ・セルジョ・パンタレーオ・ジュリアーニ（Mauro Giuseppe Sergio Pantaleo Giuliani, 1781年7月27日 - 1829年5月8日）は、19世紀初頭における最も重要なクラシック・ギター奏者の一人であり、多作な作曲家としても知られています。イタリアのナポリ王国に生まれ、主にオーストリアのウィーンで活動しました。

生涯の軌跡

ジュリアーニはビシェーリエに生まれましたが、幼い頃に兄ニコラと共にバルレッタへ移り、そこで音楽教育を受けました。当初はチェロを学び、この楽器への関心は生涯続きました。また、ヴァイオリンも習得したと考えられています。その後、ギターに傾倒し、驚くべき速さでその技術を習得し、非常に熟練した奏者となりました。イタリア時代に関する詳細は不明な点が多いですが、マリア・ジュゼッペ・デル・モナコと結婚し、息子ミケーレ（1801年バルレッタ生まれ）をもうけています。トリエステやボローニャでの滞在を経て、1806年の夏、ジュリアーニは家族をイタリアに残し、音楽の中心地ウィーンへと旅立ちました。

ウィーンでは、ヴィルムート嬢との間に娘マリア（1807年生まれ）をもうけるなど、私生活の変化もありました。この地で古典派の器楽曲のスタイルを深く学び、1807年には自身の作品出版を開始します。ジュリアーニの超絶技巧と洗練された音楽性はヨーロッパ各地での演奏旅行で称賛され、彼は瞬く間に音楽界の有名人となりました。19世紀初頭のウィーンで活躍した多くの演奏家や作曲家の中でも、ジュリアーニは最高峰の一人に数えられるようになります。

ジュリアーニは、当時の西洋音楽においてギターという楽器に新たな地位をもたらした音楽家です。オーストリア帝国の貴族階級はもとより、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンやジョアキーノ・ロッシーニといった高名な作曲家たちからも認められ、ウィーンで最も優れた演奏家たちと積極的に共演しました。特に重要な出来事として、1815年にはピアニストのヨハン・ネポムク・フンメル、ヴァイオリニストのヨーゼフ・マイゼーダー、チェリストのメルクと共に「ドゥカーテン・コンツェルト」と呼ばれる室内楽シリーズに出演し、ウィーン音楽界での名声を確固たるものにしました。同年には、ウィーンの帝国議会の公式な演奏家にも任命されています。また、1813年12月8日には、ベートーヴェンの交響曲第7番の初演にチェリストとして参加したとされています。

作曲家としてはウィーンで着実に成功を収めました。主に楽譜出版社アルタリアと協力関係を結び、多くのギター曲を出版しましたが、他の地域の出版社とも取引を行い、自身の作品をヨーロッパ各地に広めました。また、優れたギター教師としても評判を確立し、多くの門下生を育てています。

しかし、主に経済的な困難から、1819年にウィーンを去ることを余儀なくされます。資産や預金は債権者によって差し押さえられていました。イタリア帰国後はトリエステやヴェネツィアに滞在した後、ローマに落ち着きましたが、ここでは大きな成功は得られず、わずかな作品出版と一度きりの演奏会に留まりました。この間、1813年生まれの娘エミリアは、1821年から1826年にかけて、腹違いの姉マリアと共に女子修道院で教育を受けています。

1823年7月頃からは、病の父親を見舞うため頻繁にナポリを訪れるようになります。両シチリア王国の都であるナポリでは、ジュリアーニの評価が好転し、地元の出版社から新たな作品が出版されました。1826年には、ポルティチにおいて国王フランチェスコ1世とその宮廷のために御前演奏を披露しています。ナポリでの晩年には、自身と同様に巧みなギター奏者となった娘エミリアと共演する機会が増えました。1828年末に体調を崩し、1829年5月8日にナポリでその生涯を閉じました。彼の死は、ナポリの音楽界に少なからず衝撃を与えたと言われています。

作品の特徴と影響

ジュリアーニは作曲家として、特に変奏曲の形式を好みました。これは当時ウィーンで非常に人気の高いジャンルでもありました。彼はギターという楽器の特性を最大限に活かしつつ、美しい旋律と効果的なパッセージを巧みに織り交ぜる能力に長けていました。その代表例の一つが、ヘンデルの有名なアリア「調子の良い鍛冶屋」を主題とした「ヘンデルの主題による変奏曲」作品107です。

ジュリアーニの作曲活動は非常に多岐にわたり、作品番号を付されたギター曲だけでも150曲を超えます。これらの作品は、19世紀のクラシック・ギターの重要なレパートリーの中核を形成しています。彼は高度な演奏技巧を要求する独奏曲だけでなく、ヴァイオリンやフルートとの二重奏曲といった室内楽、さらにはギター協奏曲も作曲しました。

彼の主要な作品には、3つのギター協奏曲（作品30、36、70）や、ロッシーニのオペラのアリアを基にした連作幻想曲「ロッシニアーナ」（作品119～124）、「ギター五重奏曲」作品65、そして華麗な「イタリア様式による大序曲」などがあります。また、交響作品をギター独奏や二重奏用に編曲することも多く、ロッシーニのオペラ「セビリアの理髪師」序曲の編曲などが知られています。教育目的の作品も多数手掛け、その中には現代でもギター教材として利用されているものがあります。

他の作曲家との共作もあり、ヨハン・ネポムク・フンメルとはギターとピアノのための「国家の大ポプリ」を、イグナツ・モシェレスとはピアノとギター、または2台のピアノのための「協奏的大二重奏曲」を共同制作しました。モシェレスとの共作では、自身の練習曲作品48-12の一部を引用しています。

ジュリアーニのギター作品は多大でありながら、同時代のフェルナンド・ソルとは異なり、彼の作品全集の録音プロジェクトは現在に至るまで実現していません。しかし、その音楽は現代のギタリストにとって欠かせないレパートリーの一部であり、クラシック・ギターの歴史において極めて重要な位置を占めています。

もう一度検索