マオリ王

マオリ王の歴史と地位

マオリ王、またの名をアリキ・ヌイ（Ariki Nui）は、ニュージーランドの先住民族マオリによる社会運動であるキンギタンガの象徴として知られています。彼は法的な地位を持たないものの、多くのマオリから支持され、社会的な影響力を発揮しています。現在の王は第8代のナ・ワイ女王です。

キンギタンガの誕生

マオリは1769年にジェームズ・クックが来航するまで、ニュージーランドの伝統的な住民でした。クックの到来以降、白人植民者がマオリの土地を奪い、文化や社会構造に大きな影響を与えました。この状況を受けて、1840年にはワイタンギ条約が締結されましたが、これは英語とマオリ語の解釈の違いや、参加していない首長がいることで問題が多いものでした。土地の奪取が進む中、マオリの間では新たな宗教運動が生まれ、土地を守るための団結が強化されました。

特に1850年代には土地不買同盟が結成され、マオリにも王が必要だとの認識が広まりました。このような背景の中、初代王ポタタウが1858年に即位し、キンギタンガ運動が本格的に始まりました。ポタタウは自らの役割を「神と人の法を実行し、王のもとに法と秩序と平和が訪れる」と宣言しました。しかし、土地を巡る争いは続き、1850年代から60年代にかけての土地戦争へと発展しました。これにより、キンギタンガの指導者たちは抵抗を続け、マオリの文化やアイデンティティを守ろうとしました。

21世紀におけるマオリ王

1894年にタウィアオが没した後、彼の息子が王位を継承しましたが、白人との対立を深める中で、次代のテ・プエアがその主導権を掌握します。テ・プエアはマオリの伝統を復興させるために尽力し、彼女の主導した活動は多くのマオリに影響を与えました。第一次世界大戦時には彼女が徴兵制に反対する運動を展開し、病気流行時には多くの孤児を受け入れるなど、彼女の影響力は広がりました。その後の1940年代には政府との交渉を通じて土地返還問題が解決されるなど、マオリの権利擁護の活動が進められました。

1953年にはイギリス女王エリザベス2世が訪問し、マオリ王との対話が行われました。これにより、マオリ王の存在感はさらに強まります。彼の役割は単なる象徴ではなく、マオリの文化や権利を守るための重要な存在として認識されているのです。

マオリ王の権能と文化的役割

現在のマオリ王には法的な地位はありませんが、彼はニュージーランド社会において重要な文化的アイコンとしての役割を果たしています。ニュージーランド総督が就任の際には、トゥランガワエワエを訪れマオリ王を表敬する慣例があり、これにより彼の重要性が強調されています。継承にあたっては、先代の葬儀で有力者たちが後継者を選出・推戴する制度があり、全ての王が初代王ポタタウの子孫であることが特徴です。

このように、マオリ王は単なる称号ではなく、マオリ文化やアイデンティティの保持と発展を支える存在として、板挟みにされながらもその影響力を発揮しています。

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