マクイルショチトル

マクイルショチトル：アステカ神話の五つの花

マクイルショチトルは、アステカ神話に登場する重要な神です。その名は、アステカ暦の260日周期であるトナルポワリに基づいており、ナワトル語で「5つの花」を意味します。トナルポワリでは、5から始まる日付は20種類ありますが、その中でもマクイルショチトルは、南の方角に配属される5つの神々、「アウィアテテオ」の一柱として位置づけられています。

アウィアテテオは、飲酒、賭博、性行為などの過剰な行為に耽った者に病をもたらす神々として知られています。バティカン絵文書Bやボルジア絵文書などの絵画資料では、アウィアテテオは、アステカ神話における主要な神、テスカトリポカの特徴を反映している様子が示されています。また、これらの神々は、西の方角に配属される別の5つの神々、シワテテオと配偶関係にあるとされています。図像的には、アウィアテテオの神々は口元に指を伸ばした手の印（5を表す）が描かれていることが特徴です。

マクイルショチトルは、宮廷の人々を守る守護神としての役割も担っていました。同時に、ゲームや賭博、特にアステカの伝統的なボードゲームであるパトリの神としても崇められていました。歴史家ディエゴ・ドゥランの記録によると、パトリの競技者はサイコロを振る際に、マクイルショチトルまたはプルケ（発酵飲料）の神であるオメトチトリ（2のウサギ）の名前を大声で叫んでいたとされています。

マクイルショチトルは、ショチピリという別の神と密接な関係があり、しばしば同一視されることもあります。ショチピリとマクイルショチトルに対応する女神として、ショチケツァルが挙げられます。これらの神々は、アステカの宗教観において、互いに複雑に絡み合い、信仰の対象として重要な位置を占めていたと考えられます。

アステカ暦において、マクイルショチトルは、1の花のトレセーナ（20日周期）を司る神として機能していました。これは、アステカ暦が複雑な構造を持つことを示しており、マクイルショチトルが暦の中における重要な役割を担っていたことを裏付けています。

このように、マクイルショチトルは、アステカ暦、アステカ神話、そしてアステカ社会の様々な側面と深く関わっている神です。その多様な役割と、他の神々との複雑な関係性から、マクイルショチトルを理解することは、アステカ文明の宗教観や社会構造を理解する上で不可欠です。今後の研究によって、さらに多くの知見が明らかになることが期待されます。

参考文献

Miller, Mary; Taube, Karl (1993). The Gods and Symbols of Ancient Mexico and the Maya: An Illustrated Dictionary of Mesoamerican Religion. Thames & Hudson. ISBN 0500050686
Mountjoy, Joseph B. (2001). “Patolli”. The Oxford Encyclopedia of Mesoamerican Cultures. 2. Oxford University Press. p. 448. ISBN 0195108159
Smith, Michael E. (2012). The Aztecs (3rd ed.)*. Wiley-Blackwell. ISBN 9781405194976

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