マクシミリアン1世 (バイエルン選帝侯)

マクシミリアン1世：バイエルンを揺るがした選帝侯

マクシミリアン1世（1573年 - 1651年）は、バイエルン公としてその治世を始め、後に選帝侯の地位を得た人物です。彼は、激動の時代であった三十年戦争において、カトリック連盟を率い、その政治手腕によってバイエルンの勢力拡大に大きく貢献しました。彼の生涯は、宗教対立と権力闘争が渦巻くヨーロッパの縮図とも言えるでしょう。

生涯

1573年、マクシミリアン1世はミュンヘンで生まれました。イエズス会による教育を受け、幼い頃から政治的なセンスを磨きました。1597年に父ヴィルヘルム5世の退位を受け、バイエルン公の座を継承します。即位後、彼は財政再建と常備軍の確立に尽力し、領内の安定化を図りました。また、芸術にも造詣が深く、デューラーやルーベンスの作品を収集し、ヴィッテルスバッハ家のコレクションを充実させました。

三十年戦争

マクシミリアン1世の治世において、最も重要な出来事と言えるのが三十年戦争（1618年 - 1648年）です。彼はカトリックの立場を強く支持し、1608年にはドナウヴェルトを占拠してカトリック化を推進しました。このことがプロテスタント諸侯の警戒を招き、プロテスタント同盟が結成されるきっかけとなります。翌1609年、マクシミリアン1世はカトリック連盟を結成し、宗教対立は深刻化の一途を辿りました。

1619年、ボヘミアで反乱が発生し、プファルツ選帝侯フリードリヒ5世がボヘミア王に擁立されると、マクシミリアン1世は神聖ローマ皇帝フェルディナント2世に協力し、家臣のティリー伯を派遣して白山の戦いで勝利を収めました。この功績により、1623年にフリードリヒ5世から選帝侯位を剥奪されたフェルディナント2世から、代わりに選帝侯位を与えられました。しかし、このことは三十年戦争をさらに激化させる要因となりました。

マクシミリアン1世は、フェルディナント2世に協力しながらも、その動向を警戒していました。特に、スペイン軍がプファルツに進駐し、オランダ侵攻の拠点とされたことに対しては、フランスとの同盟を模索するなど、牽制の動きを見せました。しかし、フランス、デンマーク、スウェーデンが対ハプスブルク同盟を結成すると、北ドイツのプロテスタント諸侯もこれに呼応し、マクシミリアン1世の選帝侯位が危うくなる可能性が生じました。そのため、彼は再びフェルディナント2世に協力し、ハプスブルク家側に留まることを選択しました。

デンマーク戦争終結後、フェルディナント2世が絶対主義的な政策を推し進めようとしたため、マクシミリアン1世はドイツ諸侯と連携して皇帝軍を率いるヴァレンシュタインの罷免を要求しました。1630年にヴァレンシュタインが罷免されると、ティリーが皇帝軍司令官に就任しましたが、1631年にマクシミリアン1世はフランスと秘密条約を結び、ティリーを見捨てました。しかし、翌1632年にスウェーデン王グスタフ2世がバイエルンに侵攻すると、条約を破棄してティリーを呼び戻しました。ティリーがレヒ川の戦いで戦死すると、マクシミリアン1世はミュンヘンから逃亡し、バイエルンはスウェーデン軍によって略奪されるという屈辱を味わいました。その後、彼は皇帝側に復帰し、1634年のネルトリンゲンの戦いを経て、翌1635年のプラハ条約でフェルディナント2世と和解し、カトリック連盟を解散しました。

フランスが三十年戦争に参戦すると、マクシミリアン1世配下の将軍フランツ・フォン・メルシーとヨハン・フォン・ヴェルトが奮戦しましたが、1645年のヤンカウの戦いでスウェーデン軍に敗北し、メルシーは戦死しました。1646年には、テュレンヌとウランゲル率いるフランス・スウェーデン連合軍に再びバイエルンを侵攻され、翌1647年に休戦しました。同年に中立に反発したヴェルトが皇帝軍に合流すると、マクシミリアン1世も皇帝軍に合流しましたが、1648年のツースマルスハウゼンの戦いで大敗を喫し、再び休戦しました。この戦いを経て、三十年戦争は終戦へと向かいました。

ヴェストファーレン条約とその後

1648年のヴェストファーレン条約によって、マクシミリアン1世は選帝侯位を保持し、旧プファルツ選帝侯領の一部を引き続き領有することが認められました。一方、フリードリヒ5世の息子カール1世ルートヴィヒも所領の多くを取り戻し、新たに創設された選帝侯位を得ました。三十年戦争終結から3年後の1651年、マクシミリアン1世は78歳で死去し、息子のフェルディナント・マリアが選帝侯位を継承しました。

マクシミリアン1世は、激動の時代を生き抜き、バイエルンの勢力拡大に大きく貢献した人物として、歴史に名を残しています。彼の生涯は、政治的な駆け引きや宗教対立、そして戦争の悲惨さを物語る、貴重な教訓を与えてくれます。

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