マクドナルド橋のフィアンセ

マクドナルド橋のフィアンセ：ヌーヴェルヴァーグの息吹が感じられる、セリフのない短編映画

アニエス・ヴァルダ監督による短編映画『マクドナルド橋のフィアンセ』（仏題：Les fiancés du pont Mac Donald ou Méfiez-vous des lunettes noires）は、1961年製作のフランス映画です。日本語タイトルは『マクドナルド橋の婚約者、あるいは黒眼鏡に御用心』と訳されます。この作品は、ヌーヴェルヴァーグを代表する女性監督であるヴァルダの初期作品の一つであり、その独特のスタイルと、豪華なキャストが注目を集めています。

ヌーヴェルヴァーグのスターたちが集結

当時、ヌーヴェルヴァーグの中心人物であったジャン＝リュック・ゴダールと、彼の妻であったアンナ・カリーナが主演を務めています。他にも、エディ・コンスタンティーヌ、ダニエル・ドロルム、ジャン＝クロード・ブリアリ、サミ・フレーといった、当時のフランス映画界を彩ったスターたちが脇役として出演しています。さらに、プロデューサーであるジョルジュ・ド・ボールガール自身も映画に出演するなど、豪華なキャスティングが作品の魅力を高めています。

サイレント映画としての独自性

『マクドナルド橋のフィアンセ』は、セリフを一切使用しないサイレント映画という点も特徴です。映像と音楽、そして俳優たちの演技だけで物語が展開していくため、観る者の想像力を掻き立てられます。登場人物たちの表情や仕草、そして背景となるパリの街並みなどが、繊細に描き出されています。

後年の作品との繋がり

興味深いことに、本作はヴァルダ監督の翌年（1962年）公開の長編映画『5時から7時までのクレオ』の一部として使用されています。この映画では、主人公クレオが周りの人物に本作の一部を上映するシーンがあります。これは、ヴァルダ監督が自身の作品を有機的に繋げ、作品世界を広げる手法を示していると言えるでしょう。

スタッフと技術

監督・脚本はアニエス・ヴァルダ、撮影監督はジャン・ラビエ、編集はジャニーヌ・ヴェルノーが担当しました。美術、装飾、衣裳、メイクはベルナール・エヴァン、音楽はミシェル・ルグランが担当するなど、ヌーヴェルヴァーグを代表するスタッフ陣が結集しています。白黒16ミリフィルム、モノラル音声（セリフなし）というフォーマットも、当時のフランス映画の制作環境を反映しています。

キャスト

アンナ・カリーナ：若いブロンド娘アンナ役
ジャン＝リュック・ゴダール：黒眼鏡の男役
エミリエンヌ・カーユ：黒いフィアンセ役
エディ・コンスタンティーヌ：給水する男役
サミ・フレー：葬儀屋役
ジョルジュ・ド・ボールガール：霊柩車と救急車の運転手役
ダニエル・ドロルム：花売り娘役
イヴ・ロベール：ハンカチ売り役
アラン・スコット：水兵役
ジャン＝クロード・ブリアリ：看護師役

まとめ

『マクドナルド橋のフィアンセ』は、ヌーヴェルヴァーグの代表的な作品の一つであり、その革新的な手法と豪華なキャストによって、今もなお多くの映画ファンを魅了し続けています。セリフのないサイレント映画という形式、そして後年の作品との繋がりなど、ヴァルダ監督の独自の映画表現が詰まった、見応えのある短編映画です。 この作品は、ヌーヴェルヴァーグの魅力と、アニエス・ヴァルダという稀有な才能を改めて私たちに認識させるでしょう。

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