マクラーレン・M14A

マクラーレンM14AとM14D：1970～1971年シーズンのマクラーレンを支えたマシン

マクラーレンM14Aは、1970年から1971年のF1世界選手権を戦ったフォーミュラ1マシンです。同チームの前モデルであるM7AおよびM7Cをベースに開発されました。M14Aの大きな特徴は、リアブレーキがアウトボード式からインボード式に変更された点です。一方、エンジンとトランスミッションは、コスワースDFVとヒューランド製5速マニュアルギアボックスと、前モデルから変更はありませんでした。

M14Aを改良したモデルとして、M14Dが登場します。M7Dと同様に、アルファロメオのオートデルタ部門が開発に携わりました。搭載されたエンジンは、アルファロメオ製3リッターV8エンジンで、同社のスポーツカーであるT33と同じものが使用されました。このエンジンの採用は、マクラーレンチームにとって新たな挑戦であり、パフォーマンス向上に大きく貢献しました。

1970年シーズン：悲劇と挑戦

1970年シーズンは、マクラーレンチームにとって喜怒哀楽の入り混じった一年となりました。チームのエースドライバー、ブルース・マクラーレンとデニス・ハルムは、シーズン序盤で好成績を残し、表彰台に何度も上がりました。しかし、6月2日、グッドウッドサーキットで新型Can-AmマシンM8Dのテスト走行中に、ブルース・マクラーレンが事故死するという悲劇に見舞われました。この事故は、モータースポーツ界に大きな衝撃を与え、マクラーレンチームにも大きな影を落としました。

チームは、ブルース・マクラーレンの死を受けてベルギーグランプリを欠場。その後、代役ドライバーとしてダン・ガーニーとピーター・ゲシンを起用してレースに復帰しました。ハルムは、インディ500で負傷した影響もあり、フランスグランプリから復帰。シーズンを通して、ガーニー、ゲシン、ハルムが入れ替わるようにしてM14Aをドライブしました。ハルムは3度の3位入賞を果たす活躍を見せましたが、チームはコンストラクターズランキング5位という結果に終わりました。一方、アンドレア・デ・アダミッチはシーズン序盤をM7Dで走り、オランダグランプリからM14Dにマシンをスイッチしました。

1971年シーズン：M19Aへの移行

1971年シーズン、ピーター・ゲシンはM14Aでシーズンを開始しましたが、リタイアや低位フィニッシュが続き、その後M19Aへと移行しました。ハルムもM19Aをドライブしました。M14Aはその後ジャッキー・オリバーがドライブしましたが、目立った成績を残すことはできませんでした。このシーズン、マクラーレンチームはM19Aを主力マシンとして運用し、M14Aは徐々にその役割を終えていきました。結果的に、1971年のマクラーレンのポイントはすべてM19Aによって獲得されました。

M14AとM14Dは、マクラーレンチームの歴史において重要な役割を果たしたマシンです。特にM14Dのアルファロメオ製V8エンジンの採用は、後のマクラーレンの技術開発に影響を与えたと言われています。しかし、ブルース・マクラーレンの死という大きな悲劇も、このマシンの歴史に深く刻まれています。その活躍と悲劇の物語は、F1の歴史に永遠に語り継がれるでしょう。

もう一度検索