マクロブロック

マクロブロック：デジタル映像圧縮の基礎単位

デジタル画像や動画の圧縮技術において、マクロブロックは重要な役割を果たす処理単位です。一般的に16×16ピクセルのブロックサイズで構成され、画像や動画データを効率的に圧縮するために用いられています。本稿では、マクロブロックの概念、構成要素、歴史、そして技術的な詳細について解説します。

マクロブロックの概念

マクロブロックは、離散コサイン変換（DCT）などの線形ブロック変換を用いた画像・動画圧縮方式の中核を成す単位です。画像全体をこのマクロブロックと呼ばれる小さなブロックに分割し、それぞれのブロックに対して圧縮処理を行うことで、データサイズを削減します。これにより、画像や動画を効率的に保存・伝送することが可能になります。

マクロブロックの構成と処理

典型的なマクロブロックは、16×16ピクセルの輝度成分(Y)と、8×8ピクセルの色差成分(Cb, Cr)で構成されます。これは4:2:0サンプリングと呼ばれる方式です。このマクロブロックはさらに小さなブロックに分割され、DCTなどの変換処理が行われます。変換処理によって、周波数成分を分離し、人間の視覚特性に基づいて、重要度の低い周波数成分を量子化することで、データ量を削減します。

マクロブロックを用いた代表的な規格

マクロブロックは、JPEG、MPEG-1、MPEG-2、H.261、H.262、H.263、MPEG-4 Part2、H.264/AVCといった多くの画像・動画圧縮規格で使用されてきました。これらの規格では、マクロブロックを基本単位として、画像・動画の符号化・復号化が行われます。

H.265/HEVC以降の変遷

H.265/HEVC規格以降では、マクロブロックの概念は直接的には使用されなくなりました。代わりに、コーディングツリーユニット (CTU)と呼ばれる、より柔軟な処理単位が採用されています。CTUは、マクロブロックと同様に画像を分割した単位ですが、サイズが可変であり、画像の内容に応じて最適なサイズを選択することができます。これは、より効率的な圧縮を実現するために導入された重要な変更点です。

マクロブロックと変換ブロック

マクロブロックは、DCTなどの変換処理を行うための変換ブロックに分割されます。初期の規格では、変換ブロックのサイズは8×8ピクセルが一般的でしたが、H.264/AVCでは4×4ピクセルや8×8ピクセルの変換ブロックが使用されるようになり、より細かい制御が可能になりました。変換ブロックのサイズは、画像の複雑さや圧縮率に応じて動的に変更されることもあります。

マクロブロックと予測ブロック

マクロブロックは、予測ブロックに分割されることもあります。予測ブロックは、動き補償予測やイントラ予測といった手法を用いて、隣接ブロックの情報から現在のブロックの画素値を予測します。これにより、予測誤差のみを符号化することで、データ量を削減できます。予測ブロックのサイズは、規格や設定によって異なり、H.264/AVCでは、4×4から16×16ピクセルまでのサイズが使用されます。

マクロブロッキングアーティファクト

マクロブロックを用いた圧縮では、マクロブロッキングアーティファクトと呼ばれる、画像にブロック状のノイズや歪みが出現することがあります。これは、圧縮処理によって情報が失われることで発生し、特に低ビットレートでの圧縮において顕著に見られます。このアーティファクトを低減するために、様々な技術が開発されています。

まとめ

マクロブロックは、長年にわたってデジタル画像・動画圧縮技術の中核を担ってきた重要な処理単位です。最新の規格では、より柔軟なCTUへと進化していますが、マクロブロックの概念は、デジタル映像圧縮技術の基礎として理解しておくべき重要な要素です。今後の技術革新においても、マクロブロックの概念を理解することは、映像圧縮技術の理解を深める上で不可欠となります。

もう一度検索