マサバ

マサバ（真鯖）について

マサバは、スズキ目サバ科に属する海水魚で、学名を Scomber japonicus といいます。世界中の亜熱帯から温帯海域にかけて広く分布しており、日本では重要な食用魚として親しまれています。一般的に「サバ」と呼ばれる場合、多くはこのマサバを指すことが多いです。

形態

成魚は全長50cmほどに成長します。体型は前後に細長い紡錘形で、短い吻が特徴的です。体の断面は楕円形をしており、各鰭は比較的小さいです。鱗は細かく、側線鱗数は210-220枚ほどに達します。背面は青緑色で、サバ特有の黒い曲線模様が多数見られます。腹部は銀白色で模様はありません。

同属のゴマサバとの違いとして、ゴマサバは腹面に小さな黒点が散在すること、体の断面が円形に近いことが挙げられます。また、第一背鰭の棘条数（マサバは10以下、ゴマサバは11以上）、背鰭の軟条数（マサバは16以下、ゴマサバは17以上）でも区別することができます。

生態

マサバは、暖流に面した亜熱帯・温帯海域に広く分布しており、日本では暖流に沿った海域に多く見られます。水温は摂氏14～17度程度のやや冷たい水を好みます。

沿岸の表層で大群を作って遊泳し、春に北上、秋に南下する季節的な回遊を行います。1日に10kmほどの距離を移動しますが、沿岸の岩礁域に留まる群れも存在します。肉食性で、動物プランクトン、小魚、頭足類などを捕食します。

産卵期は2～8月で、直径1.08-1.15mmほどの分離浮性卵を産卵します。産卵数は、全長25cmの個体で10万～40万、全長40cmで80万～140万に達しますが、卵や稚魚を保護する習性はないため、成長過程で多くの個体が他の動物に捕食されます。

利用

食用魚として非常に重要な位置を占めており、日本国内で流通するサバ類の中で最も多いのがマサバです。巻き網や定置網などの沿岸漁業で大量に漁獲されるほか、外洋に面した防波堤や船からの釣りでも獲れます。

地域ブランドも多く、大分県の「関さば」、神奈川県の「松輪サバ」、青森県八戸市の「八戸前沖鯖」などが有名です。近年では、環境変化や乱獲の影響で漁獲量が激減しましたが、休漁などの保護政策により回復傾向にあります。

身はやや白っぽいですが、赤身魚に分類され、DHAやEPAを豊富に含んでいます。秋から冬にかけて脂がのり美味しくなりますが、夏は味が落ちると言われます。特に脂の乗った鯖は「とろ鯖」と呼ばれ珍重されます。

調理法は非常に多岐にわたり、〆鯖、鯖寿司、焼き魚、煮付け、唐揚げ、缶詰、鯖節などとして利用されます。新鮮なものは刺身でも食べられますが、傷みやすくアニサキスが寄生している可能性もあるため、生食は一般的ではありません。缶詰や塩鯖など、保存加工された形で流通することが多いです。

JR西日本が販売する「お嬢サバ」や、茨城県が取り組む「常陸乃国まさば」は、人工海水での養殖や、卵から人工飼料で育てることでアニサキスの寄生を防ぎ、生食を可能にしています。

食中毒のリスク

サバは傷みやすい魚として知られており、鮮度の落ちたものを食べると食中毒を引き起こす可能性があります。特に注意が必要なのが、ヒスタミン中毒（スコンブロイド中毒）です。これは、サバの筋肉を特定の微生物が分解することでヒスタミンが生成されることが原因で発生します。ヒスタミンは調理や加熱では除去できないため、鮮度管理を徹底し、劣化した筋肉を摂取しないことが重要です。

その他

養殖業では、飼料の原料としても重要な役割を果たしています。

慣用句

鯖の生き腐れ: 非常に傷みやすいことを指す。
鯖を読む: 鯖を大雑把に数えていたことから転じ、年齢などを偽ることを意味する。
* 鯖折り: 相撲の決まり手の一つ。


マサバは、私たちの食生活に欠かせない重要な資源であり、その生態や利用法を理解することは、持続可能な食文化を築く上で非常に大切です。

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