マスリパタム包囲戦

マスリパタム包囲戦：イギリス東インド会社の勝利

マスリパタム包囲戦は、七年戦争（第三次カーナティック戦争）中の1759年3月6日から4月7日にかけて、イギリス東インド会社軍がフランス軍を包囲し、勝利した戦いです。この戦いは、イギリスがインドにおける勢力を拡大する上で重要な転換点となりました。

背景：フランスの失策とイギリスの台頭

1758年、フランス領インド総督ラリー伯爵は、ビュッシー＝カステルノー侯爵をハイデラバードから呼び戻しました。これによりハイデラバードは手薄となり、現地のラージャが反乱を起こす事態に。この機に乗じて、ロバート・クライヴ率いるイギリス東インド会社は、フランシス・フォード率いる遠征軍を派遣し、ラージャと協力してフランス領の攻略を開始しました。

1758年12月9日、コンドールの戦いにてフォード率いるイギリス軍はフランス軍に大勝。ラージャからの資金提供の合意を得た後、フォード軍は1759年1月28日に進軍を再開、2月6日にはマスリパタムの北48マイルに位置するエッロールを占領しました。3月1日にはラージャ軍と合流し、マスリパタムに向けて進軍。3月2日には干上がったコレル湖を渡り、3月3日にはマクリーン大尉率いるセポイ部隊がコンカル砦を攻撃し、占領しました。そして3月6日、フォード軍はついにマスリパタムに到着したのです。

経過：包囲、砲撃、そして奇襲

フォード軍がマスリパタムに到着した際、フランス軍はコンフラン伯爵の指揮下、町の前に強固な陣形を敷いていました。しかし、コンフラン伯爵は要塞内に撤退。この判断が、結果的にフランス軍を不利な状況に追い込むことになります。

フランス軍は1751年にマスリパタムを占領して以来、要塞の守備を強化していました。包囲戦の頃には、要塞は不規則な平行四辺形をしており、南側は河口が天然の障壁となり、残りの三方は城壁と稜堡によって守られていました。一方、フォード軍は砲台を築きましたが、完成までに18日間も要しました。その間、フランス軍はイギリス軍の近くの要塞に接近し、そこからベンガルからの資金をより安全な場所に移しました。この結果、フォード軍は資金源を断たれ、さらにラージャがフランス軍を恐れて資金提供を打ち切ったため、資金が底をつきました。兵士たちは給料未払いに不満を募らせ、3月19日には脱走を企てるほどでした。

3月25日に砲台が完成すると、フォード軍は砲撃を開始。しかし、その2日後には、ニザーム王国の君主であるサラーバト・ジャング率いる4万人の監視軍が40マイル手前まで接近し、フォード軍は危機に瀕しました。フォードは交渉によってニザーム軍の進軍を遅らせる一方、砲撃を継続。しかし、4月5日には嵐によって砲撃が中断されてしまいます。翌4月6日、砲弾の残りはわずか2日分、資金も底をつき、マドラスとの連絡も途絶え、前にはフランス軍、後ろにはニザーム軍という絶望的な状況の中、フォードは最後の攻撃を決意します。

要塞の南西にある溝は未完成で、周囲は沼地でしたが、ノックス大尉率いるセポイ軍は陽動作戦として攻撃を仕掛けました。そして、本隊は北東から、砲兵を含むイギリス兵士と海員30人の合計362名によって攻撃を敢行。この奇襲は見事に成功し、コンフラン伯爵は降伏を申し出ました。

結果：イギリスの勝利とフランスの没落

降伏後、フランス軍の兵力がフォード軍をはるかに上回っていたことが判明しました。降伏したフランス軍は、ヨーロッパ人500名、マダガスカルやティモール出身の兵士とセポイ2,539名でした。

フォードの勝利は、ニザームとの交渉を一気に有利に進めました。サラーバト・ジャングは1ヶ月間躊躇しましたが、最終的に海岸線から80マイルまでの土地をイギリスに割譲し、フランス軍との交渉を一切行わないことを約束しました。これにより、イギリスは広大な領土を確保するとともに、ニザーム王国におけるフランスの影響力を完全に排除することに成功しました。

4月中に捕虜交換が行われた後、フォードは半年間マスリパタムに留まりました。そして10月15日頃、フォードは駐留軍としてイギリス兵士300名とセポイ800名をフィッシャー大尉に残し、自らは海路でカルカッタへと向かいました。

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