マセラティ・MC12

マセラティ MC12の全貌

MC12は、イタリアの自動車メーカーであるマセラティが開発したスーパーカーで、その独自のデザインと卓越した性能で知られています。これは、マセラティがエンツォ・フェラーリをベースにしたマシンをFIA GT選手権に投入する予定だったことに起因していますが、様々な事情によりキャンセルとなり、代わりにエンツォ・フェラーリの構成部品を流用した新たなレースカーとしての開発が始まりました。

当初は「MCC」という名称でしたが、後に「MC12」に改称され、2004年のジュネーブモーターショーで正式に発表されました。これはマセラティにとって、1983年に生産が終了したメラク以来、21年ぶりとなるミッドシップモデルです。

デザインと構造

MC12のシャシは軽量さを追求したカーボンモノコックを基盤にしており、ノーメックスハニカム構造が採用されています。また、安全性を確保するためにロールケージが装備されています。サスペンションにはダブルウィッシュボーン式が採用されており、フロント部分はボタンで車高を調整可能です。ブレーキシステムはブレンボ製で、前は6ピストン、後ろは4ピストンキャリパーが使用されています。さらに、ドライバーは「スポーツ」と「レース」の2つの走行モードを選択することができます。

ボディデザインはフランク・ステファンソンによるもので、サイズは全長5,143mm、全幅2,096mm、全高1,205mmとエンツォ・フェラーリよりも大型化されています。カーボン製のボディは着脱可能なルーフを持ち、ウイングは固定式で、角度の調整はできない設計です。重量配分は前41%：後59%となっており、その特異なボディカラー「Bianco Fuji」は、日本の富士山から名付けられています。

エンジンと性能

エンジンには、エンツォ・フェラーリのV12エンジンをベースにした6.0L DOHC V12エンジンが搭載されており、最高出力は632PS、トルクは66.5kg·mを発生します。加速性能も優れており、0-100km/hはわずか3.8秒、最高速度は330km/hに達します。トランスミッションは「カンビオコルサ」という6速セミオートマチックで、パドルシフトで操作が可能です。

豪華なインテリアもMC12の魅力の一つです。マセラティブルーに染められたレザーやアルミ、カーボン素材が使用され、スパルコ製のセミバケットシートを装備しています。センターコンソールにはイグニッションボタンがあり、マセラティの伝統的な楕円形のアナログ時計が展示されています。エアコンは装備されていますが、カーオーディオは取り付けられていません。価格は約1億円とされ、2004年には30台（うち5台は非売品）、2005年には25台が生産されました。

レース活動

MC12はFIA GT選手権での活動でも知られています。2004年にはMC12 GT1として2台が出走し、初戦のイモラ・サーキットでは2位と3位を獲得。その後、オッシャースレーベンでのレースでは初の1位も達成しました。2005年から2006年にかけては、ヴィタフォンレーシングチームがチームタイトルとドライバーズランキングでの成功を収めました。

さらに、2006年には「ベルシオネコルセ」という限定モデルが発表され、このモデルではエンジン出力が755PSに強化されています。公道走行が不可能なこのモデルは、価格が約100万ユーロ（約1億5300万円）と高額です。

MC12は、その性能とデザインから、スーパーカーの象徴的な存在となっています。マセラティの誇りを体現しつつ、スピードと快適性を兼ね備えた一台です。

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