マゼッパ (リスト)

フランツ・リストの『マゼッパ』

フランツ・リストの『マゼッパ』は、同名の複数の作品が存在しますが、特に有名なのは以下の2つです。

ピアノ曲『超絶技巧練習曲』第4番 (S.139-4)
交響詩第6番 (S.100)

これらの作品は、ヴィクトル・ユーゴーの叙事詩『マゼッパ』に触発されて作曲されました。元となるピアノ曲から、交響詩へと発展を遂げた壮大な物語を音楽で表現しています。

ピアノ曲『マゼッパ』

概説

『マゼッパ』の原型は、リストが15歳の時に作曲した『12の練習曲』S.136/op.1（1826年）の第4曲に遡ります。この初期の作品では、後の『マゼッパ』で特徴的となる三度のフレーズが左右の手で交互に演奏されるのが特徴です。1837年には、主題が追加され『24の大練習曲』（実際は12曲）の第4曲、練習曲ニ短調（S.137-4）として改作されました。その後、1840年にユーゴーの叙事詩『マゼッパ』に感銘を受け、同名のタイトルが与えられ、独立した作品として出版されました。さらに1851年には、このピアノ曲を基に交響詩第6番が作曲され、同年にピアノ曲としても改訂され、現在知られる『超絶技巧練習曲』の1曲となりました。

『超絶技巧練習曲』版は、3段譜で書かれており、演奏には高度な技術が求められます。特に、以下の点が演奏を困難にしています。

3度の音型を2本指で演奏する
オクターブの連続移動
広い間隔の手の跳躍
音の強弱の激しい変化
素早い指の移動

楽譜における3段譜は、上段と下段で鐘の音色を、中段で馬の足音を表現しています。中段の「m.d.」は右手、「m.s.」は左手を意味し、頻繁な左右の入れ替えが求められます。

構成

アレグロ、ニ短調、4分の4拍子で構成され、序奏とコーダ付きの三部形式です。中間部も主部の主題に基づいているため、単一主題による三部形式とみなせます。演奏時間は約7分で、初期版は約1分、第2版は約4分でした。

交響詩第6番『マゼッパ』

作曲年代と場所

1851年に作曲され、1854年に改訂されました。作曲はドイツのヴァイマルで行われました。

概説

ユーゴーの叙事詩『マゼッパ』に基づいた標題音楽で、ピアノ曲『マゼッパ』と同じタイトルですが、単なる管弦楽編曲版ではなく、別の作品と言えるほど内容と規模が拡大されています。激しい戦闘の描写から始まり、トランペットのファンファーレを経て、最後は勝利の大行進曲で締めくくられます。曲の展開は、交響詩第3番『前奏曲』や第13番『ゆりかごから墓場まで』にも共通する要素が見られます。

楽器編成

フルート3（3番はピッコロ持ち替え）、オーボエ2、イングリッシュホルン、クラリネット2、バスクラリネット、ファゴット3、ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、チューバ、ティンパニ（1対）、シンバル、トライアングル、バスドラム、弦5部という大規模な編成です。

演奏時間

演奏時間は約16分です。

まとめ

リストの『マゼッパ』は、ピアノ曲と交響詩という異なる形式で、ユーゴーの叙事詩の世界を表現した壮大な作品です。ピアノ曲では高度な演奏技術が求められ、交響詩では大規模なオーケストラによって物語が壮大に描かれています。それぞれの作品が持つ独特の魅力と歴史を理解することで、より深く『マゼッパ』の世界を堪能できるでしょう。

参考資料

Études d'exécution transcendante, S.139 (Liszt, Franz)の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)
* Mazeppa, S.100 (Liszt, Franz)の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)

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