マタガルパ

ニカラグアの商業都市、マタガルパ：歴史、文化、そして自然

マタガルパは、ニカラグア共和国の中央部に位置する都市であり、マタガルパ県の県都です。人口は約17万人（2021年）で、首都マナグアに次ぐ商業の中心地として発展を遂げてきました。「北の真珠」や「常春の地」と称されるほど、温暖な気候と豊かな自然に恵まれた街です。

地名の由来

マタガルパという地名は、その起源について諸説あります。1898年から1959年にかけてこの地で暮らしたカトリック司祭、ギリェルモ・キエネは、先住民のスモ語で「岩のあるところへ行こう」という意味だと解釈していました。しかし、他に「水の横」や「山のなか」といった説も存在し、マタガルパを流れるグランド川と、周囲を囲む雄大な山々の風景を考えると、いずれも納得できる地名と言えます。

歴史：先住民から現代へ

古くから先住民の村が存在していたマタガルパ。独自の言語を持っていた先住民の文化は、1875年頃に消滅したと考えられていますが、フィラデルフィアのアメリカ哲学図書館には、97文字から成るマタガルパ語の文献が保存されています。

1554年、スペイン人が「北の海」（カリブ海）への河川を探していた際にこの地を建設しました。スペインによるニカラグアの植民は太平洋岸から始まったため、太平洋を「南の海」、カリブ海を「北の海」と呼んでいました。マタガルパはカリブ海と太平洋の分水嶺に位置しており、イギリスがモスキート海岸を支配し、スペインが太平洋沿岸を植民地としていた植民地時代の歴史を色濃く残しています。

1850年には金が発見され、スペイン人やメキシコ人の他に、ドイツからの移民も多くやってきました。中でもハノーファー出身のルートヴィヒ・エルスターとシュヴァルツヴァルト出身のカタリーナ・ブラウンは、この地でコーヒー栽培を始め、成功を収めたことで知られています。彼らに続いて120人以上のヨーロッパ移民がコーヒー栽培に携わり、多くがマタガルパの女性と結婚して、現在もその子孫が暮らしています。

1856年には、ウィリアム・ウォーカーがニカラグア大統領に就任した際に、マタガルパは多くのニカラグア人が彼の侵攻から逃れる避難場所となりました。この地で愛国者たちが北部陸軍を結成し、ウォーカー側の軍と戦い勝利を収めたという歴史もあります。

1930年代にはデンマークからの移民がいましたが、先住民の反乱によってほとんどが帰国しました。しかし、グレン家とメラー家の2家族は残留し、現在もその子孫が暮らしています。1978年にはソモサ家独裁政権に対する学生らの反乱が起き、マタガルパは革命の重要な舞台となりました。

現在、マタガルパ県は首都マナグアに次ぐニカラグアの主要な県であり、産業が多角化しています。しかし、近年は農村部からの移民流入が課題となっており、インフラ整備や環境問題への対応が求められています。

経済：多様な産業と観光

マタガルパの経済は多様な産業で支えられています。牛肉、チーズ、コーヒー豆、カカオ豆などの農産物に加え、花卉、木材、トウモロコシ、豆類、果物、野菜などが生産され、地元で消費されています。良質なコーヒー豆、牛肉、牛乳、野菜、花卉の産地として知られ、エコツーリズムも盛んです。アランフェス、サンタ・マリア・デ・オストゥマ、セルバ・ネグラなどの山岳リゾート地も人気を集めています。

観光業はマタガルパの経済を支える重要な柱であり、マタガルパ・ツアーズなどの観光事業者が市内および近郊でツアーを提供しています。近年はドイツ政府の支援により、飲料水システムと廃水処理施設が整備され、インフラ整備が進んでいます。

気候：年間を通して温暖な気候

マタガルパと近隣のヒノテガ市は、一年を通して春のような温暖な気候に恵まれています。標高700m以上の高地に位置し、年間平均気温は26℃～28℃、湿度75％～85％、年間降水量は1200mm～1900mmです。

ゆかりの人物

マタガルパには、歴史に名を残す数多くの著名人がゆかりがあります。知事や大聖堂建築者であったナサリオ・ベガ、1923～24年のニカラグア大統領バルトロメ・マルティネス、サンディニスタ民族解放戦線の創設者カルロス・フォンセカ・アマドール、プロボクサーのバイロン・ロハスなどが挙げられます。

研究と観光の拠点

近年では、歴史学、考古学、植物学、人類学などの専門家による研究調査や、最初の入植者のアメリカやヨーロッパからの子孫によるルーツ探訪も盛んに行われています。マタガルパは、豊かな歴史と自然、そして発展する経済を持つ、魅力的な都市です。

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