マチュー・ケレク

マチュー・ケレク：ベナンの政治家、革命家

マチュー・ケレク（Mathieu Kérékou, 1933年9月2日 - 2015年10月14日）は、ベナンの政治家であり、革命家です。彼は、ダオメー共和国時代からベナン共和国時代にかけて、1972年から1991年、そして1996年から2006年までの合計29年間、同国の大統領を務めました。

生涯

ベナン北西部で生まれたケレクは、1947年にフランス植民地軍に入隊し、軍人としてのキャリアをスタートさせました。1960年に仏領ダオメーがダオメー共和国として独立すると、ベナン陸軍に参加。独立時の大統領ユベール・マガが同じ北部出身だったため、重用され、マガ失脚後も順調に昇進を重ねました。1967年には、モーリス・クアンデテ少佐によるクーデターに参加し、クリストファ・ソグロ独裁政権を打倒する一翼を担いました。

1972年10月26日、ケレクは再びクーデターを決行し、ユベール・マガ、スル・ミガン・アピティ、ジャスティン・アホマデグベらが構成する大統領評議会を打倒し、大統領の座に就きました。ここから、ケレクによる長期独裁政権が始まりました。

社会主義への傾倒と転換

大統領就任後、ケレクは中華人民共和国と国交を樹立(1972年12月)し、マルクス・レーニン主義に基づく社会主義国家建設を目指しました。1975年11月には国名を「ベナン人民共和国」へ改称し、一党独裁政党として「ベナン人民革命党 (PRPB)」を結成しました。しかし、国有化政策はすぐに頓挫し、クーデター未遂や軍と急進派の対立など、政情不安を招くことになりました。1980年代に入ると、ケレク政権は西欧諸国に接近し、路線修正を余儀なくされました。

民主化と大統領への返り咲き

1990年、経済政策の失敗によって民主化運動が激化。ケレクは民主化勢力の要求を受け入れ、複数政党制を認め、国民会議を招集しました。国民会議は、ケレクが穏健に民主化勢力に譲歩したことを評価し、大統領時代の免責を与えました。また、民主的な大統領選挙までの間、実権は制限されたものの、ケレクの大統領としての地位と名誉は保証されました。

1991年の大統領選挙に出馬したケレクは、ニセフォール・ソグロに敗れ、一時的に政権を失います。しかし、1996年の大統領選でソグロを破って当選し、見事大統領に返り咲きました。2001年の選挙でも再びソグロを破り、再選を果たしました。

市場経済化と積極外交

クーデターで実権を握った当初は軍事独裁色が強かったケレクでしたが、選挙で当選した1996年以降は、ベナン経済の市場経済化を推進しました。また、アフリカ諸国に平和維持部隊を派遣するなど、積極的な政治運営を展開しました。憲法上の三選禁止規定を遵守し、2006年3月に任期満了で退陣。選挙によってヤイ・ボニが次の大統領となりました。

また、2002年には日本のタレントでベナンの外交官であるゾマホン・ルフィンへ国民栄誉賞を授与しました。

2015年10月14日、82歳で死去。

マチュー・ケレクは、その波乱万丈な人生を通して、ベナンの政治に大きな影響を与えた人物として記憶されています。

もう一度検索