マックマスター大学

マクマスター大学（McMaster University、通称Mac）は、カナダのオンタリオ州ハミルトン市に所在する、長い歴史を持つ公立の研究大学です。カナダを代表する高等教育機関の一つとして国内外に知られ、特に医学部や工学部は高い評価を受けています。創立当初はトロントにありましたが、1930年に現在のハミルトンに移転しました。この移転は、単なる場所の移動に留まらず、大学と地域社会、そして卒業生や宗教団体との強い結びつきを示す出来事となりました。当時の大学の土地と建物は、卒業生の支援に加え、オンタリオ州とケベック州にまたがるバプテスト派教会の代表者、さらにはハミルトン市民からの温かい寄付という形で提供され、大学の将来的な発展に向けた確固たる基盤を築いたのです。大学は広大な敷地に多様な施設を備え、多数の学生が学んでいます（学生数は2006年時点でフルタイム約1万8千人、パートタイム約3千人）。

本学は研究活動に重点を置いており、革新的な教育手法としても知られる「問題解決型学習（Problem-Based Learning, PBL）」を医学教育で早期に取り入れたことでも有名です。キャンパスには、世界的に知られる研究施設や学習環境が整っています。特にマクマスター原子炉（MNR）は、原子力に関する研究や同位体生産において重要な役割を果たしています。経済学や商学を学ぶ学生のために設置されたアレン・H・ゴウルド・トレーディング・フロアは、実際の市場に近い環境で金融取引を体験できる施設です。また、マクマスター美術館は、カナダ国内外の美術品を所蔵し、文化的な側面も豊かにしています。

マクマスター大学は、付属機関としてマックマスター神学大学を持っています。これはバプテスト系の神学教育機関であり、マクマスター大学が州立大学に移行する際に、その神学部が分離独立したものです。

国際的な評価も非常に高く、タイムズ・ハイアー・エデュケーション（THE）による世界大学ランキングでは、常に世界のトップ100前後にランクインしています。近年（2020年から2024年）の順位はおおむね以下の通りで、研究力と教育水準の高さを示しています。

2020年：72位
2021年：69位
2022年：80位
2023年：85位
2024年：103位

カナダ国内でも、屈指の総合大学としての地位を確立しています。

マクマスター大学は、各界に多くの有為な人材を輩出しています。特に、ノーベル賞受賞者を複数擁している点は、本学が誇る研究・教育水準の高さを象徴しています。

バートラム・ブロックハウス: 教授、1994年ノーベル物理学賞受賞（中性子散乱分光法）
マイロン・ショールズ: 1962年卒業、1997年ノーベル経済学賞受賞（デリバティブ価格理論）
ジェームズ・オルビンスキー: 1990年卒業、1999年ノーベル平和賞受賞（国境なき医師団代表の一人として）
* ドナ・ストリックランド: 1981年卒業、2018年ノーベル物理学賞受賞（レーザー物理学）

その他、カナダをはじめとする各国の政治家（ウィリアム・エイモス、ティホミル・オレシュコビッチ、ダルトン・マクギンティ、トミー・ダグラスなど）や、ノキア元CEOのスティーブン・エロップ氏、日本マクドナルドCEOのサラ・カサノバ氏といった実業界のリーダーも卒業生に名を連ねます。

日本からも、多くの研究者や教育者が本学で学び、活躍しています。主な出身者としては、順天堂大学の内藤亮准教授、産業技術総合研究所の細川秀明主任研究員、国際教養大学の大森久子准教授などが挙げられます。また、マックマスター神学大学出身者には、関東学院大学の冨田茂美准教授がいます。

近年では、2013年に孔子学院が閉鎖されるなど、国際的な関係性における議論も生じています。しかし、マクマスター大学は今後も、グローバルな視点を持った研究と教育を推進し、社会に貢献していくことが期待されています。

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