マッハ (ケルト神話)

マッハ（Macha）は、ケルト神話に登場する戦いの女神であり、モリガン、バズヴと並ぶ三姉妹の一柱とされています。古アイルランド語では「ヴァハ」と呼ばれ、その名はケルト語で「平原」を意味する「magesiā」に由来します。「赤い鬣のマッハ（Macha Mong Ruad）」または「赤毛のマッハ（Macha Dearg）」とも呼ばれることがあります。

マッハは、馬、戦い、豊穣、そして主権を司るとされ、戦士たちを戦闘の狂気の渦へと導く力を持つと信じられていました。モリガンが魔法の他に槍を用いて戦うのに対し、マッハは常に魔法のみを用いて戦うとされています。また、戦死者の首を食べるとも伝えられており、敵の首を門に飾るケルトの風習は「ヴァハの木の実の餌」と呼ばれ、彼女への供物であると考えられていました。

神話において、マッハは女神エルンワスの娘であり、フィル・ヴォルグ族との戦いでは魔法を駆使してトゥアハ・デ・ダナーンの勝利に大きく貢献しました。しかし、フォモール族との戦いでは、バロールによってヌアザと共に殺されてしまいます。その後、マッハは何度も転生を繰り返し、ネヴェズ族の族長の妻やミレ族の王女、クルンヌッフ（クルンチュー）の妻たる妖精として、度々神話に登場しています。

マッハは、アイルランド海軍の警備艦の名前（LÉ Macha）にもなっています。この艦は元々、イギリス海軍のフラワー級コルベットHMS Borageでしたが、後にアイルランドへと売却され、現在は退役しています。

参考文献：

松村一男『世界の神々の事典 - 神・精霊・英雄の神話と伝説 - 』学研〈Books Esoterica 事典シリーズ 5〉、2004年、ISBN 978-4-05-603367-0
STUDIO-M『ケルト - 幻想の神々 - 』ジャパン・ミックス、1997年、ISBN 978-4-88321-355-9
山北篤監修、稲葉義明他著 『西洋神名事典』新紀元社、1999年、ISBN 978-4-88317-342-6
健部伸明と怪兵隊『虚空の神々』新紀元社〈Truth in Fantasy 6〉、1990年、ISBN 978-4-915146-24-4
池上正太『ケルト神話』新紀元社〈Truth In Fantasy 85〉、2011年、ISBN 978-4-7753-0868-4
松村一男他編『世界女神大事典』原書房、2015年、ISBN 978-4-562-05195-3

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