マップ (Apple)

Appleマップ：その歴史と進化

Appleマップは、Appleが開発・運営する地図アプリケーションで、iOS、iPadOS、macOS、watchOSのデフォルトの地図アプリとして利用されています。地図表示だけでなく、自動車、徒歩、公共交通機関のナビゲーションや到着予想時刻の提供、3D景観表示のFlyoverモード、360度パノラマ表示のLook Around機能（一部地域のみ）など、多岐にわたる機能が搭載されています。

初期の歴史とGoogleマップからの移行

Appleマップが登場する以前、初代iPhoneが発売された2007年6月から、iPhone OS（後のiOS）にはGoogleマップがデフォルトの地図アプリとして採用されていました。しかし、2012年6月11日、AppleはWWDC 2012で、Googleマップの使用を終了し、オランダのナビゲーションシステムメーカーであるTomTomのデータを用いた独自の地図サービスへ移行することを発表しました。

同年9月19日、iOS 6でAppleマップがリリースされ、GoogleマップはiOSのデフォルトから外されました。しかし、初期のAppleマップは、不正確な案内、公共交通機関への対応不足、多数のバグやエラーにより、ユーザーやメディアからの厳しい批判にさらされました。Appleはこれらの批判を受け、マップの精度改善に取り組みました。

その後の改善と進化

iOS 7以降、Appleマップは急速に改善され、iOS 11では高機能で実用的な地図アプリへと進化を遂げました。

初期リリース時の課題と対応

2012年6月のWWDCで発表されたAppleマップは、ターンバイターンナビゲーション、3Dマップ、Flyover、Siriとの連携を特徴としていました。しかし、リリース後、その精度不足から大きな批判を浴び、Apple CEOのティム・クックは公式に謝罪。Googleマップなどのサードパーティ製アプリの利用を推奨するメッセージを掲載する事態となりました。この不具合の責任を取り、上級副社長のスコット・フォーストールが解雇されるという影響も出ました。

Googleとの関係と独自地図への移行

GoogleマップがiOSのデフォルト地図アプリだった時代、GoogleはAndroid版にターンバイターンナビゲーション機能を搭載し、Appleとの間で緊張が高まりました。AppleはGoogleがユーザーデータを過剰に収集していると主張。その後、独自の地図サービスを搭載したiOS 6をリリースし、GoogleマップはWeb版のみの提供となりました。GoogleはAppleマップに対抗し、Google EarthにFlyover機能に相当する機能を追加し、後にApp StoreでGoogleマップをリリースしました。

Appleが独自地図サービスを開発するという噂は、2009年にオンライン地図サービスPlacebaseを買収したことから始まりました。その後、3D地図専門の企業を複数買収し、Appleマップの機能強化を図りました。

2012年～2015年の進化

リリースから1年後、Appleマップはエラー修正と機能改善を重ね、衛星画像の追加、ナビゲーション対応都市の拡大などが行われました。また、公共交通機関のマッピングに特化した企業や、屋内マップの専門企業、地図データの管理企業などを買収し、マップの精度向上に努めました。

2013年のiOS 7では、インターフェースが刷新され、フルスクリーンモード、ナイトモード、リアルタイム交通情報、歩行者向けナビゲーションなどの新機能が追加されました。また、デスクトップ版の地図アプリがOS X Mavericksで利用可能となり、連絡先やカレンダーアプリとの連携が可能になりました。

2014年にはiOS 8とOS X Yosemiteがリリースされましたが、マップに大きな変更はありませんでした。しかし、「City Tours」機能が追加され、Flyoverで名所を巡るツアーが可能になりました。2015年にはApple Watchにマップが搭載され、ターンバイターンナビゲーションが利用可能となりました。

2015年～2018年の進化

2015年のiOS 9では、公共交通機関の情報が追加され、主要都市の交通機関の遅延情報も表示されるようになりました。また、「この周辺」機能により、周辺の注目スポットをカテゴリ別に表示できるようになりました。この機能は順次対応地域が拡大されました。

2016年には、watchOSとiOS向けにマップのアップデートが行われ、デザインが刷新されました。インドにはマップ開発センターが設立され、開発体制も強化されました。

2018年～現在

2018年には、自転車シェアリングステーションの検索機能が追加され、地図データがTomTomなどのサードパーティ製から、Appleが独自に収集したデータへと移行されました。詳細な地図データは、まずサンフランシスコのベイエリアから導入され、その後、他の地域にも拡大されました。

2020年4月にはアメリカ全土で詳細地図が公開され、同年夏にはヨーロッパ、日本にも詳細地図が導入されました。日本では、Look Around機能も利用可能になりました。また、サイクリング案内も追加され、対応都市が順次拡大されています。

主な機能

Appleマップは、ベクター画像を使用しているため、データ容量を抑えつつ、詳細な地図表示が可能です。地図は、通常地図、衛星写真、ハイブリッド表示、公共交通機関表示の4つのレイヤーで構成されています。地図データの主要プロバイダーはTomTomですが、自動車ナビゲーションデータやオープンストリートマップなどのデータも利用されています。

経路検索機能では、自動車、徒歩、公共交通機関のナビゲーションに対応しており、リアルタイムの交通情報も表示されます。AppleのAIアシスタントSiriとも連携しており、音声で目的地を設定することも可能です。

Flyover

Flyoverは、大都市やランドマークを3D表示で俯瞰できる機能です。視点を自由に移動できるため、まるで空中散歩をしているかのような体験ができます。Flyoverに対応した都市では、City Tours機能も利用可能です。

この周辺

「この周辺」機能では、レストランや交通機関などのカテゴリ別に周辺の注目スポットを検索できます。スポットの情報は、名前、距離、Yelpのレビューとともに表示されます。

公共交通機関

公共交通機関機能では、主要都市とその周辺の公共交通機関の路線図が表示され、電車の時刻表や駅の出入り口情報も確認できます。

屋内マップ

iOS 11からは、空港やショッピングモールの屋内マップも提供されています。

渋滞状況

マップ上ではリアルタイムの渋滞情報が表示され、ナビゲーションでは渋滞を考慮した迂回路が提案されることもあります。

Look Around

Look Around機能は、360度パノラマ写真で周囲の景観を見渡せる機能です。

Apple Maps Connect

中小企業向けのApple Maps Connectサービスでは、ビジネス情報の登録や編集が可能です。

市場シェア

リリース当初は不具合が多かったAppleマップですが、その後の改善によりユーザー数を増やしています。アメリカでは、Googleマップの利用者が減少する一方で、Appleマップの利用者が増加しました。イギリスでは、iPhoneユーザーの多くがAppleマップを利用しています。

初期の不正確さ

初期のAppleマップは、地図データの不正確さやバグにより、多くのユーザーから批判を浴びました。誤った場所表示、存在しない駅の表示、3D表示の歪みなど、さまざまな問題点が報告されました。

日本での不具合例

日本では、空港が別の名称で表示されたり、駅が実際とは異なる場所に表示されたりするなどの問題がありました。また、実在しない鉄道駅が表示されたり、地図の3D表示に歪みが生じたりする問題も報告されました。

Appleの対応

これらの批判を受け、Appleは公式に謝罪し、地図の改善に取り組むことを表明しました。また、開発プロセスの見直しや、ユーザーフィードバックの収集にも力を入れました。

TomTomの対応

地図データの主要提供者であるTomTomも、Appleマップの不具合の原因を、Appleが多くのデータソースを統合しようとしたことにあると指摘しました。

まとめ

Appleマップは、初期の不具合から大幅に改善され、高機能で実用的な地図アプリへと進化を遂げました。今では多くのユーザーが利用しており、Appleの重要なサービスの一つとなっています。

参考情報

iOS / iPadOS / watchOS / macOS
Google マップ (Googleの競合サービス)
オープンストリートマップ
マップ - Apple（日本）
国や地域ごとの利用できる機能一覧
Appleマップの画像収集作業について
Appleマップ（全てのデバイス）
ウェブ版

もう一度検索