マツダ・ビアンテ

マツダ・ビアンテ：広々空間と個性的なデザインのミニバン

マツダ・ビアンテは、2008年から2018年まで販売されていた8人乗りミニバンです。2006年に販売終了したボンゴフレンディの後継車種として、日産セレナやトヨタヴォクシー/ノアといったライバル車種に対抗するために開発されました。

開発の経緯と特徴

他社の競合車種が人気を博する中、マツダはプレマシーをベースに、新たなミニバン開発に着手しました。ビアンテの最大の特徴は、その広々とした室内空間です。従来のミニバンは全幅1700mm以内（5ナンバー車）が主流でしたが、ビアンテは全幅1770mm（3ナンバー車）とすることで、クラス最大級の室内空間を実現しました。これはマツダが「最広空間」と謳うほどの広さです。

開発においては、従来のプロトタイプ製作を一切行わず、デジタルモデルによるシミュレーションを徹底することで開発期間とコストを削減しました。これは自動車業界において非常に珍しい手法です。

また、乗用車用のプラットフォームをベースにミニバンを設計するという、技術的な挑戦も見られます。背の高いミニバンを、ペダル位置の変更などをせずに実現するための工夫が凝らされています。

デザインとインテリア

ビアンテのデザインは、歌舞伎の隈取を思わせるシャープなフロントマスクが特徴的です。Aピラーからのブラックアウト処理や、フロントライトがボディを回り込んだような独特のデザインは、賛否両論ありました。視認性を高めるため、広いガラス面積と大型の三角窓を採用しています。

インテリアは広さだけでなく、使い勝手にも配慮されています。後方へ行くほどシートのヒップポイントが高くなるレイアウトにより、どの席からも開放感のある視界を確保しています。シートアレンジは、「リビングモード」「ウォークスルーモード」「ラゲッジモード」の3種類があり、用途に応じて使い分けられます。2列目シートはベンチシートとキャプテンシートの両方に対応しますが、3人掛けとした場合、中央席のヘッドレストや3点式シートベルトは省略されています。

インパネにはマツダ車初となる「トップマウントワイドメーター」を採用し、視認性と開放感を両立しています。電動両側スライドドアは、開口幅780mmとクラス最大級です。

エンジンとトランスミッション

エンジンは、当初1.998Lと2.260Lのガソリンエンジンを搭載。トランスミッションは、FF車が5速AT（2.260Lはマニュアルモード付き）、4WD車が4速ATでした。その後、2009年の一部改良で2.0L FF車にアイドリングストップシステム「i-stop」を搭載したLF-VDS型エンジンに変更、2013年のマイナーチェンジで「SKYACTIV-G 2.0」エンジンと6速AT「SKYACTIV-DRIVE」に進化しました。ディーゼルエンジンやハイブリッド車は設定されませんでした。

モデルライフと販売

ビアンテは、2008年7月に発売されました。当初の月間販売目標は3000台でしたが、販売台数は伸び悩みました。日本国内専売車でしたが、2012年からインドネシア、2013年から香港・マカオにも輸出されました。

発売後、特別仕様車や限定車も複数設定されました。2013年のマイナーチェンジでは「SKYACTIV TECHNOLOGY」を採用し、燃費を向上させました。「GRANZ」グレードも設定されましたが、ミニバン市場からの撤退に伴い、2017年9月に生産終了、2018年3月に販売終了しました。

まとめ

マツダ・ビアンテは、広々とした室内空間と個性的なデザイン、そして独自の開発手法が特徴的なミニバンでした。販売台数は伸び悩みましたが、マツダの技術力を示す一台と言えるでしょう。後継車種としては、3列シートSUVのCX-8が挙げられます。ビアンテのコンセプトを受け継ぎ、より広い市場を目指したモデルと言えるでしょう。

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