マツムシソウ

マツムシソウ（松虫草、学名：Scabiosa japonica）は、マツムシソウ科マツムシソウ属に分類される多年草です。日本固有種であり、北海道から本州、四国、九州にかけての山地の草原に自生しています。

特徴

草丈は60cmから90cm程度まで成長し、葉は対生して羽状に深く裂けています。夏から秋にかけて、直径約4cmの紫色の頭状花を咲かせます。開花時期は8月から10月頃です。

マツムシソウは、通常は秋に発芽して葉を出し、冬を越してから花を咲かせて枯れる越年草（冬型一年草）として知られていますが、高地では枯れずに2年目の葉を出す多年草となることもあります。

和名の由来は、マツムシ（スズムシ）が鳴く時期に花が咲くことにちなむという説があります。また、薬草として皮膚病などに用いられることもあります。

近年、マツムシソウは各地で減少傾向にあり、日本国内の31の都道府県でレッドリストに指定されています。これは、生育地の環境変化や乱獲などが原因と考えられます。

園芸品種として栽培されている「スカビオサ」という名前で知られる植物は、近縁種であるセイヨウマツムシソウ (Scabiosa atropurpurea)であることが多いです。

下位分類

マツムシソウには、いくつかの下位分類が知られています。

シロバナマツムシソウ (Scabiosa japonica Miq. f. albiflora (Honda) H.Hara): 白い花を咲かせる品種です。
ソナレマツムシソウ (Scabiosa japonica Miq. f. littoralis Nakai): 草丈が10cmから25cmと低い、海岸型の品種です。関東地方の海岸に分布しています。
エゾマツムシソウ (Scabiosa japonica Miq. var. acutiloba H.Hara): 本州北部と北海道に分布する変種です。
タカネマツムシソウ (Scabiosa japonica Miq. var. alpina Takeda): 草丈が30cmから35cmと低く、頭花が大きい高山型の変種です。本州中部以北と四国の高山に分布します。
シロバナタカネマツムシソウ (Scabiosa japonica Miq. var. alpina Takeda f. alba Sugim.): タカネマツムシソウの白い花を咲かせる品種です。


参考文献

佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎他編『日本の野生植物 草本Ⅲ合弁花類』 平凡社、1981年10月
清水建美「マツムシソウ」、『週刊朝日百科植物の世界』9（マシムシソウ　オミナエシ）、朝日新聞社、1994年6月12日発行。
林弥栄『日本の野草』山と溪谷社〈山溪カラー名鑑〉、2009年10月、pp.137-139頁。ISBN 9784635090421。
米倉浩司・梶田忠 (2003-) BG Plants 和名−学名インデックス」（YList）


関連項目

スクシサ・プラテンシス：かつてマツムシソウ属に分類されていた植物で、別名「松虫草擬き」とも呼ばれます。現在は別種とされています。イギリスから中央アジアにかけて分布しています。

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