マドンナ・デル・オルモの戦い

マドンナ・デル・オルモの戦い：オーストリア継承戦争の一幕

マドンナ・デル・オルモの戦い、またはクーネオの戦いとして知られるこの戦いは、1744年9月30日、オーストリア継承戦争中にイタリアのクーネオ近郊で繰り広げられました。スペイン・フランス連合軍とサルデーニャ王国軍が激突し、結果として連合軍が勝利を収めましたが、戦略的な観点から見ると、戦況を大きく変えるには至りませんでした。

戦いの背景：フランスとスペインの思惑

この戦いの背景には、フランスとスペインそれぞれの政策の違いがありました。スペインはイタリア沿岸を進軍し、ジェノヴァを通過してパルマ周辺を占領することで、フェリペ5世とエリザベッタ・ファルネーゼ王妃の息子、フェリペ王子のための領地獲得を目論んでいました。一方、フランスはサルデーニャ王国を屈服させ、オーストリアとの同盟から離脱させる、あるいは戦争から離脱させることを目標としていました。

フランス軍の指揮官、コンティ公ルイ・フランソワ1世はスペインの計画に難色を示しましたが、エリザベッタは自らの目的が最優先であると主張し、両者は最終的に妥協案として、まずサルデーニャを屈服させ、その後ロンバルディアに進軍してフェリペ王子の領地を確保するという方針で合意しました。

クーネオへの進軍：難路を突破する戦略

ピエモンテへの侵攻計画は、フランスの山岳戦専門家、ピエール＝ジョゼフ・ブルセによって立案されました。侵攻軍にとって最大の難関は、険しい山道を越えることでした。ブルセは、数に勝る連合軍を複数の部隊に分けて進軍させることで、サルデーニャ軍を包囲し、予期せぬ場所から攻撃するという浸透戦術を採用しました。この戦術により、連合軍はサルデーニャ軍の防御を突破し、ストゥーラ・ディ・デルモンテ川を越えて進軍しました。

カステルデルフィーノの戦いで勝利した後、連合軍はクーネオへの最後の要地であるデモンテを攻略し、クーネオの包囲を開始しました。

クーネオの包囲：サルデーニャ軍の抵抗

プロイセン王フリードリヒ2世がボヘミアに進軍していたため、サルデーニャ王カルロ・エマヌエーレ3世はクーネオ守備軍の大半を割かざるを得ませんでした。彼はカール・ジークムント・フリードリヒ・ヴィルヘルム・ロイトゥルム・フォン・エルティンゲン将軍を指揮官に任命し、民兵隊を召集してゲリラ活動を展開させました。包囲が開始されると、ロイトゥルムは照明を利用して敵の塹壕を照準したり、突撃隊を派遣するなど、巧みな防御戦術を展開しました。

カルロ・エマヌエーレ3世の反撃計画：大胆な戦略

カルロ・エマヌエーレ3世は、数的に不利な状況を打開するため、大胆な計画を立案しました。彼の計画は、連合軍との会戦、クーネオへの補給と負傷者の搬出、連合軍の前哨地の攻撃、攻城堡塁の破壊、そして連合軍の連絡線の遮断という5つの目標から構成されていました。この計画の鍵は、コンティ公らがサルデーニャ本軍に気を取られている隙に、他の4つの目標を達成することにありました。これらの目標が達成されれば、冬の到来とともにフランス・スペイン軍は撤退を余儀なくされると考えたのです。

戦闘の経過：マドンナ・デル・オルモでの激突

9月末、カルロ・エマヌエーレ3世は自軍をクーネオに進め、コンティ公もこれに応じて軍を前進させました。9月30日、両軍はマドンナ・デル・オルモで激突しました。戦闘は、サルデーニャ軍のクロアチア騎兵が突撃を開始したことで幕を開けましたが、この突撃は撃退され、その後も激しい攻防が繰り広げられました。中央部では一進一退の攻防が続き、最終的にカルロ・エマヌエーレ3世は撤退を命じ、夜には戦闘は終結しました。

戦いの後：戦略的勝利と撤退

連合軍は戦術的には勝利を収めましたが、その夜にはカルロ・エマヌエーレ3世の計画がほぼ成功していたことが明らかになりました。攻城堡塁は破壊され、クーネオ守備軍は補給と増援を受け、コンティ公は連絡線を遮断されました。さらに、雨による悪天候も重なり、連合軍は撤退を余儀なくされました。10月11日、連合軍は撤退を決定し、11月19日までにアルプスを越えて撤退しました。

マドンナ・デル・オルモの戦いは、オーストリア継承戦争における一 эпизодに過ぎませんが、フランスとスペインの戦略の違い、山岳地帯での戦術、そして劣勢な状況下でのサルデーニャ軍の抵抗など、様々な要素が絡み合った興味深い戦いでした。

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