マニバドラ

マニバドラ（Manibhadra）

マニバドラは、インド神話において重要な夜叉の一つであり、その名は「摩尼跋陀羅」や「宝賢夜叉」とも呼ばれています。彼は夜叉王クベーラの兄弟であり、地位的にはクベーラの下に位置しますが、その影響力は非常に大きいです。主に旅をする人々や商人たちの守護神とされており、彼らの安全を守る役割を担っています。

伝説の中での役割

「ラーマーヤナ」という古代インドの叙事詩では、マニバドラの活躍が描かれています。特に注目すべきは、夜叉たちの拠点であるカイラス山に、悪名高いラークシャサの王ラーヴァナが攻め込んできた際の物語です。この危機的な状況において、マニバドラはクベーラが指揮する夜叉軍のリーダーとして、四千の兵士を率いてラークシャサの軍を打ち破るという英雄的な行動をとりました。これによって、彼の勇気と決断力は一層評価されることとなりました。

宗教的信仰

マニバドラはヒンドゥー教や仏教だけでなく、ジャイナ教においても信仰の対象となっています。特に北インドでは、彼に関する信仰が根強く、パールカムで発見されたマニバドラの像の存在が、そのことを物語っています。この像は首の部分が欠けているものの、再接合された形跡があり、両腕も損なわれている一方で、下半身にはヤクシャに特有の太鼓腹を持つ特徴があります。しかし、他のヤクシャ像と比較すると、スリムな体型を持つとされています。このような形状や碑文に「尊者」と記されていることから、彼がかつて信仰の対象であったことが伺えます。

文献の中の存在

“仏母大孔雀明王経”という仏教の経典では、マニバドラは兄であり、弟にはプールナバドラがいるとされています。これにより、彼は単なる神話上のキャラクターではなく、複雑な家族関係や歴史的背景を持つ存在であることが示されています。

参考文献

• - 菅沼晃編『インド神話伝説辞典』東京堂出版、1985年
• - 高橋堯英「サカ=クシャン時代のマトゥラーにおけるヤクシャ信仰に関する一考察」『印度學佛教學研究』第51巻第1号
• - 永田郁「インド古代初期におけるヤクシャの神像彫刻について」『名古屋大学博物館報告』第19号

このように、マニバドラはインド神話と宗教の中で非常に意味深いかつ多面的なキャラクターであり、彼にまつわる伝説や信仰は、インドの文化や歴史をより深く理解するための重要な要素となっています。

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