カイラス山

カイラス山とは

カイラス山（Kailash、チベット語: གངས་རིན་པོ་ཆེ、カン・リンポチェ）は、チベット高原の西部にそびえる独立峰であり、その標高は6656メートルに達します。この山は、様々な宗教にとって神聖視されており、そのため登頂は許可されていません。実は、12世紀に活躍した聖者であるミラレパが山の頂に到達したという伝説が残っていますが、実際に登ることは極めて困難です。

名前の由来

この山のサンスクリット名は「カイラーサ」であり、その語源は不明ですが、水晶を意味する「ケーラーサ」という言葉と関係している可能性があるとされています。英語の「Kailash」とはこのカイラーサから派生したもので、日本語の「カイラス」もそこに由来しています。

信仰の山

カイラス山は、仏教（特にチベット仏教）、ボン教、ヒンドゥー教、ジャイナ教において聖地とされています。ヒンドゥー教では、この山を男根として神聖視し、ボン教においては創始者の降臨地とされています。また、信徒たちは山を巡る巡礼行為を行い、これを「コルラ」と呼んでいます。チベット仏教徒は右回りに、ボン教徒は左回りに巡礼し、ジャイナ教と安息教の信者たちは反時計回りに山を回ります。

巡礼の道

この山の周囲には、約52キロメートルの巡礼路があり、ゲルワ・グーツァンパが開設したと伝えられています。巡礼路にはタルチョやチベットの僧院、さらには鳥葬場や仏の足跡などが見られ、巡礼者の心を魅了します。最高点は標高5630メートルのドルマ・ラで、ここは「三途の逃れ坂」とも呼ばれています。南側にはタルチェン村があり、多くの巡礼者が訪れる拠点となっています。

巡礼の重要性

巡礼者の中には、特にチベット暦の午年にコルラを13回行う者が多く、1回の巡礼で12倍の功徳を得られると信じられています。実際、巡礼自体が功徳をもたらす行為とされ、熱心な信徒は五体投地をしながら巡礼することもあります。

宗教的シンボル

カイラス山は、チベット仏教においては「須弥山」と同一視され、ジャイナ教においては最初のティールタンカラであるリシャバが没した場所として特別な意味を持ちます。

到達困難な地

近年では、チベット仏教徒だけでなく、世界中からの旅行者やバックパッカーもカイラス山を訪れるようになっています。宗教的な重要性だけでなく、アクセスを得ることが困難なため、聖地としての魅力が高まっています。公共交通がほとんど整備されていないことから、旅は容易ではありません。1998年には、ラサ方面からヒッチハイクで山を目指した日本人3名が行方不明になる事件も起きています。彼らの行方は今もって謎のままです。

カイラス山は、その神秘的な雰囲気と宗教的な重要性から、訪れる者に強い影響を与える場所です。

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