マヌエル・オソーリオ・マンリーケ・デ・スニガの肖像

フランシスコ・デ・ゴヤが1787年から1788年にかけて制作した「マヌエル・オソーリオ・マンリーケ・デ・スニガの肖像」は、ロマン主義の代表的な作品の一つです。この肖像画は、スペインの貴族の家系の子どもであるマヌエル・オソーリオ・マンリーケ・デ・スニガを描いており、油彩技法を用いています。作品は現在、ニューヨークのメトロポリタン美術館に所蔵されています。

制作背景

マヌエルは1784年に第11代アルタミラ伯爵ビセンテ・ホアキン・オソーリオ・モスコソ・イ・グスマンと、彼の妻マリア・イグナシアの間に生まれました。1786年、ゴヤはアルタミラ伯爵の全身肖像を手がけ、その後、伯爵家の依頼によりマヌエルを含む家族の肖像画を数点手がけることになりました。この作品は、彼がわずか8歳で亡くなる前年に制作されました。

作品の特徴

肖像の中で、マヌエルは鮮やかな赤い衣装を着て立っています。彼はもともと数匹のペットと一緒に描かれており、特に目を引くのはカササギです。このカササギは、ゴヤの名前が記されたカードをくちばしで咥えており、彼の両手にはそのカササギの左足に結び付けられた紐が握られています。また、左側には5、6羽のゴシキヒワが入った鳥かごが、右側には3匹の猫が描かれています。この猫たちは興味深そうにカササギを見つめており、一匹は三毛猫、もう一匹は黒猫です。

この作品に描かれた動物たちは、さまざまな象徴的な解釈がなされており、ゴヤが意図的に無垢な子どもと暗い悪の連想を起こさせるように構成していると言われています。たとえば、鳥かごの鳥は「魂」と「無垢」の象徴とされ、一方で猫は「悪」の象徴として捉えられることがあります。美術史家のウォルター・ハイルはいわく、「このかわいらしい子供の肖像には、ゴヤの残酷で不気味な雰囲気が乗せられている」と述べています。

制作時期の考察

この肖像画は1787年から1788年にかけて描かれたとされ、マヌエルが3歳または4歳の頃の姿を反映しています。ただし、マヌエルの死後に描かれたとの意見も存在しますが、一般的には制作時期はその前後であると考えられています。

所蔵先と歴史

この肖像画は、初めて伯爵家に相続されましたが、1878年にビセンテ・ピオ・オソーリオ・デ・モスコソ・イ・ポンセ・デ・レオンによって個人コレクションに売却されました。その後、この作品はフランスの劇作家アンリ・ベルンスタンの手に渡り、小道具として使用されました。1924年には美術商のデュビーン・プラザーズに売却され、1927年にニューヨークの銀行家で美術収集家のジュール・ベイチュによって買い取られました。彼は作品を大変気に入り、その後メトロポリタン美術館に遺贈されました。

評価と影響

「マヌエル・オソーリオ・マンリーケ・デ・スニガの肖像」は、1880年代にゴヤが描いた子ども肖像画の中でも最も優れた作品の一つとして評価され、アイコン的な地位を確立しました。1967年にはクラウス・ヴァーチから「最も魅力的な子ども肖像画」として称賛されるなど、その影響や評価は今なお健在です。

この作品は、ゴヤが模索した感情やテーマを考察するうえで欠かせない重要な作品と言えるでしょう。その小さなモデルの背後に潜む深い意味を探ることは、視覚芸術の多様性と深さを理解するための鍵となるのです。

もう一度検索