マノヴォ＝グンダ・サン・フローリス国立公園

マノヴォ＝グンダ・サン・フローリス国立公園は、中央アフリカ共和国のバミンギ・バンゴラン州に位置する、広大な自然保護区です。ユネスコの世界遺産にも登録されており、その生物多様性の豊かさから、国際的にも重要な地域として認識されています。

公園は、アフリカ中央部の17,400平方キロメートルに及ぶ広大な面積を誇り、南はボンゴ高原、北はアウク川に挟まれています。この地域は、氾濫原や広大なサバンナ、そして多様な植生に恵まれており、さまざまな動植物が生息するのに適した環境となっています。

北部のアウク川流域

特に、北部のアウク川流域は、雨季には広範囲が水没する一方で、乾季でも完全に干上がることはありません。この独特の環境が、多種多様な水鳥にとって重要な生息地となっています。推定10,000から15,000羽が生息するとされるハシビロコウをはじめ、コシベニペリカン、モモイロペリカンなど、数多くの水鳥が観察できます。また、サンショクウミワシやアフリカハゲコウなどの猛禽類も生息しており、全体で320種にも及ぶ野鳥が確認されています。

南部のサバンナ

公園の南部には広大なサバンナが広がっており、東アフリカ、西アフリカ、サヘル、熱帯雨林といった異なる生態系の移行帯に位置しているため、多様な大型哺乳類が生息しています。アフリカゾウ、クロサイ、イボイノシシ、カバ、コリンガゼル、ダイカー、アフリカスイギュウ、ライオン、チーター、アヌビスヒヒ、サバンナモンキー、ヒョウ、リカオン、コーブ、ウォーターバック、ハーテビースト、キリンなど、57種もの哺乳類が確認されています。

世界遺産としての登録基準

マノヴォ＝グンダ・サン・フローリス国立公園は、以下の世界遺産登録基準を満たし、その普遍的な価値が認められています。

(9) 陸上、淡水、沿岸および海洋生態系と動植物群集の進化と発達において進行しつつある重要な生態学的、生物学的プロセスを示す顕著な見本であるもの。
(10) 生物多様性の本来的保全にとって、もっとも重要かつ意義深い自然生息地を含んでいるもの。これには科学上または保全上の観点から、すぐれて普遍的価値を持つ絶滅の恐れのある種の生息地などが含まれる。

危機遺産としての登録

しかしながら、この公園は1997年に危機遺産にも登録されました。1980年代に隣接するスーダンやチャドで内戦が発生したことが、その背景にあります。活動資金を得るためにゲリラによる密猟が横行し、特に象牙や角が高額で取引される動物が標的となりました。その結果、8万頭いたとされるアフリカゾウは数千頭にまで激減し、6000頭以上いたクロサイは10頭程度と、ほぼ絶滅寸前の状態にまで追い込まれました。

欧州開発基金は、1988年から公園の管理・維持のために援助を行ってきましたが、密猟の横行、スーダンからの難民流入による環境悪化などの要因により、1997年に危機遺産に登録されるに至りました。現在も、公園の生態系と生物多様性の保全は、深刻な課題に直面しています。

参考資料

ユネスコ世界遺産センター（監修）『ユネスコ世界遺産 (12) 中央・南アフリカ』講談社、1997年
中川武 三宅理一 山田幸正（監修）『世界遺産を旅する・第12巻（エジプト・アフリカ）』近畿日本ツーリスト、1999年

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