マハーバリ

マハーバリ：インド神話の偉大なるアスラ王

マハーバリは、インド神話において極めて強大なアスラの王として知られています。その名は「偉大なるバリ」を意味し、ヴァイローチャナという別名も持ちます。アスラの王族ダイティヤ族に生まれ、父はアスラ王ヴィローチャナ、祖父はプラフラーダ、曾祖父はヒラニヤカシプという、アスラの中でも名高い家系に連なります。妻はダイティヤ族の守護女神コータヴィー、そしてヴィンディヤーヴァリーであり、コータヴィーとの間に息子バーナースラをもうけています。

壮絶な生涯：三界統一から地底への転落

父ヴィローチャナが天界の王インドラとの戦いで亡くなった後、マハーバリは祖父プラフラーダのもとで教育を受けました。プラフラーダは最高神ヴィシュヌに帰依し悟りを開いたアスラであったため、マハーバリは深い精神性を培い、長じて地底界を公正かつ献身的に治める王となりました。

やがてマハーバリは父の仇を討つべく、天界へと軍を進めます。インドラ率いるデーヴァ神族を圧倒し、天界、空界、地上界の三界を掌握しました。彼の治世は平和で繁栄に満ち、世界は光り輝き、飢える者はいませんでした。しかし、この勝利は長くは続きませんでした。

デーヴァ神族は天界を追放され、その窮状を憂いた神々の母アディティはヴィシュヌに祈りを捧げます。ヴィシュヌはアディティの胎内に宿り、彼女の夫カシュヤパとの間に息子として転生しました。これがヴィシュヌの第五のアヴァターラ、矮人のヴァーマナです。

ヴァーマナは乞食の姿でマハーバリの祭に出かけました。マハーバリは人々への施しを行い、ヴァーマナにも望みを尋ねます。ヴァーマナは「自分が歩いた3歩分の土地」と願い出ました。マハーバリはそれを容易く承諾しますが、彼の師である聖仙ウシャナーは、ヴァーマナがヴィシュヌの化身であると見抜き、施しを止めるよう警告します。しかし、マハーバリは約束を重んじ、それを拒否しました。

ヴァーマナは一歩を踏み出すと同時に巨大化し、一歩で地上、二歩目で空界と天界を覆いました。三歩目を踏み降ろす場所がないと悟ったヴァーマナは、マハーバリに頭を差し出すよう求めます。マハーバリは自分の頭を「三歩目の領地」として差し出し、ヴァーマナは彼の徳に感服し、彼を許しました。そして、マハーバリは地底世界パーターラの三層目、スタラを領地として与えられ、現在もそこで親族と共に暮らしていると伝えられています。

オナム祭と現代の信仰

マハーバリは、一年に一度、国民の繁栄を祈るため現世に帰還すると信じられています。インド南部ケーララ州では、彼を称えるオナムというお祭りが毎年盛大に開催されています。また、タミル・ナードゥ州にあるマハーバリプラムという町も、彼の名に由来しています。マハーバリの物語は、インドの人々の信仰と文化に深く根付いており、現在も人々の心に生き続けています。

関連事項

ヴァーマナ
ヴィシュヌ
コータヴィー（妻）
バーナースラ（子）
ヴィローチャナ（父）
ヴァイローチャナ
ウッチャイヒシュラヴァス（マハーバリの馬、太陽の馬と同一視される）
オナム（マハーバリを称えるケーララ州の祭）
シュクラ（アスラ神族の教導者）
パーターラ（マハーバリに与えられたスタラがある地下世界）

もう一度検索