マプチェ族

マプチェ族：抵抗の民、その歴史と文化

マプチェ族は、主にチリ中南部からアルゼンチン南部に居住する先住民族です。彼らの民族名は、マプチェ語で「大地の人々」を意味し、その言葉が示すように、自然と深く結びついた生活を送ってきました。インカ帝国やスペインの侵略に対して、長きにわたり抵抗を続けた歴史を持ち、「抵抗する民」として知られています。

歴史

インカ帝国との戦い

マプチェ族は、スペイン人が到来する以前から、インカ帝国の侵略に抵抗していました。大規模な連合を形成することはなかったものの、彼らは巧みな戦術と不屈の精神で、インカ帝国の侵略を食い止めてきました。

スペインとのアラウコ戦争

16世紀以降、南アメリカに進出したスペイン人に対して、マプチェ族は300年以上にわたる激しい抵抗を続けました。この戦いはアラウコ戦争と呼ばれ、スペインの侵略を遅らせる大きな要因となりました。ラウタロやカウポリカンといった英雄的なリーダーが登場し、マプチェ族を率いてスペイン軍と勇敢に戦いました。

アラウカニア制圧作戦

19世紀後半、チリ政府は「アラウカニア制圧作戦」を実行し、マプチェ族の土地を占拠しました。太平洋戦争後の軍事力を背景に、マプチェ族は抵抗を続けましたが、最終的にはチリ政府の支配下に入ることになりました。この過程で、多くのマプチェ族が土地を失い、貧困に苦しむことになりました。

文化

社会構造

伝統的に、マプチェ族はロンコと呼ばれる首長のもとで、血縁関係を単位とした社会を構成していました。戦争時には、トキと呼ばれるリーダーを選出し、連合してより大きな集団を形成することもありました。

言語

マプチェ族は、マプチェ語（マプチェ・ドゥングン）を話します。この言語は、アラウコ語族に属し、複雑な動詞語幹を持つことが特徴です。現在、マプチェ語を流暢に話せる人口は限られており、言語の継承が課題となっています。

信仰

マプチェ族の信仰は、自然崇拝を基盤としています。マチと呼ばれる祈祷師が儀式を執り行い、病気治療や悪霊払い、雨乞いなどを行います。彼らの信仰では、Trentren Vilu y Caicai Viluなどの伝承が重要な位置を占めています。

音楽

マプチェ族の音楽は、儀式の一環として演奏されます。ピフィルカ、トゥルトゥルカ、クルトゥルン、トロンペなどの固有の楽器を用い、列になって演奏しながら祭壇を廻ります。また、語り調の歌も伝わっています。

現代の状況

現在、マプチェ族の子孫は、チリとアルゼンチンに跨る地域に多く居住しています。しかし、彼らは依然として差別や貧困に苦しんでおり、土地や水の権利を求める運動が続いています。近年では、林業系大企業との地権争いが激化し、暴力事件も発生しています。チリ政府は、マプチェ族の待遇を改善するための施策を試みていますが、根本的な解決には至っていません。

UNPOへの参加

一部のマプチェ族団体は、UNPOに参加し、国際的な関心や所有地の権利や文化の保護を訴える活動を行っています。

先住民コミュニティ管理プロジェクト

チリ政府は、マプチェ族を受益者とし、資源開発と彼らの生活水準向上を両立させることを目的とした「先住民コミュニティ管理プロジェクト」を実施しています。

マプチェ族は、過去の抵抗の歴史と独自の文化を守りながら、現代社会で生き抜こうとしています。彼らの抱える問題は、先住民族の権利や文化多様性の尊重という、普遍的な課題を提起しています。

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