マライ

マライ（ヒンディー語：मलाई、Malai）は、インド亜大陸で伝統的に作られてきた濃厚な乳製品、クロテッドクリームの一種です。その製法は、非均質化の全乳をゆっくりと時間をかけて加熱し、冷却するというシンプルな工程を繰り返すことで、独特の風味と食感を生み出します。

具体的には、全乳を約80℃までゆっくりと加熱します。この時、牛乳は沸騰させずに、じっくりと温めるのがポイントです。加熱後、牛乳をそのまま自然に冷ますと、表面に厚い黄色の層が形成されます。この層は、乳脂肪と凝固したタンパク質から成り立っており、これがマライの正体です。この層を丁寧にすくい取り、さらに残りの牛乳を再び加熱・冷却する工程を繰り返すことで、ほとんどの脂肪分を取り除くことができます。最終的に、マライには約55%もの乳脂肪分が含まれます。特に、水牛乳は乳脂肪分が豊富なため、より上質なマライを作ることができるとされています。

マライは、その濃厚な風味とコクのある食感から、様々なインドの伝統的な料理やデザートに用いられています。代表的なものとしては、以下の料理が挙げられます。

ラスマライ: スポンジ状のチーズ団子を甘いミルクソースに浸した、インドを代表するデザートです。このソースには、マライが風味とコクを加えるために使われます。
マライコフタ: 野菜やチーズなどを混ぜて作った団子を、マライベースの濃厚なグレービーソースで煮込んだ料理です。クリーミーでリッチな味わいが特徴です。
* マライクルフィ: インドのアイスクリームの一種であるクルフィの中でも、マライをたっぷり使った濃厚なタイプです。独特の風味と口どけが楽しめます。

マライは、その製法や風味において、中東やバルカン半島でみられるカイマクと共通点があります。どちらも加熱した乳製品から脂肪分を集めるという点では同じですが、マライは特にインドの食文化において重要な役割を果たしています。パニールもインドの代表的な乳製品ですが、こちらは凝固させて作られるチーズであり、マライとは製法も用途も異なります。

このように、マライはインドの食文化に深く根ざした、伝統的な乳製品です。その濃厚な味わいは、多くのインド料理やデザートを豊かに彩っています。

もう一度検索