マラウィ (ラナオ・デル・スル州)

マラウィ市：ミンダナオ島の歴史と文化の交差する都市

フィリピン、ミンダナオ島南ラナオ州の州都マラウィ市は、ラナオ湖の北岸に位置する歴史と文化の豊かな都市です。正式名称はマラウィ・イスラム市（The Islamic City of Marawi）で、人口は約13万人。ムスリムのマラナオ人が多数を占め、マラナオ語が広く通じます。農業と農産物の出荷が主要産業となっています。

歴史：ダンサランからマラウィへ

マラウィという地名は、マラナオ語で「もたれる」を意味する言葉と、ラナオ湖から流れ出るアグス川の出口付近に咲くユリの花に由来しています。かつてはダンサラン町の一部でしたが、1950年に市として設立され、1956年にマラウィ市と改名。1980年には、イスラム教徒が人口の大部分を占めることから、マラウィ・イスラム市と公式名称を変更しました。

スペイン人による探検記録によると、1689年にラナオ湖とダンサランの存在が確認されています。アメリカ統治下では1907年にモロ州の町となり、1940年には市の設立が議決されました。ラナオ・デル・スル州の州都として、商業、教育、文化、宗教、政治の中心地として発展を遂げてきました。

しかし、2017年にはISILに共鳴するイスラム系武装組織アブサヤフとの戦闘が発生。市街地は激しい戦闘の舞台となり、多くの犠牲者が出ました。この戦闘は、マラウィ市の歴史に大きな影を落とす出来事となりました。アメリカ軍の支援も得ながら、フィリピン軍は武装組織を制圧し、戦闘は終結しましたが、その傷跡は現在も残っています。

地理：ラナオ湖とアグス川

マラウィ市は、ラナオ湖とアグス川に囲まれた、起伏のある地形が特徴です。標高が高いため、熱帯地域でありながら比較的涼しく過ごしやすい気候です。降水量は年間を通してほぼ一定です。周辺自治体としては、北にカパイとサグイアラン、東にブボンとディツァアン・ラマイン、西にマランタオとサウイアランが隣接しています。

社会：マラナオ文化とイスラム教

マラウィ市民の大半はイスラム教徒です。マラナオ語が主要言語として用いられていますが、アラビア語教育も盛んで、多くの市民がアラビア語の読み書きができます。学校では英語が使用されています。

主要産業はコメ、トウモロコシ粉、穴あきブロックの製造、金細工、製材などです。織物や木工品、錫細工、鍛冶などを行う小規模工場も多く存在します。

マラウィの祭典は、イスラム教に深く根差しています。預言者ムハンマドの生誕祭やラマダンは、市民にとって重要な行事です。ラマダン期間中には、新しい食器を用意し、特別な料理を振る舞う習慣があります。Morod A Miskin（貧しい人々への食事提供）やMorod A Lomalayag（旅の安全を感謝する祭典）なども行われています。また、華やかな結婚式、特にダトゥ（地元の首長一族）の結婚式は特に盛大で、戴冠式なども同時に行われることがあります。

伝統的な民族舞踊も盛んで、マラナオ女性の独特の歩き方「キニ＝キニ」はダンスにも取り入れられています。竹の棒を打ち鳴らす伴奏で行われる「スィンキル」は、マラナオを代表する優雅な舞踊として有名です。

交通：アクセス方法

マラウィ市へのアクセスは、マニラからの飛行機（カガヤン・デ・オロ経由）またはフェリー（カガヤン・デ・オロまたはイリガン経由）が主な手段です。そこからタクシー相乗りや、バンサモロ自治地域のコタバトからは飛行機とジプニーの利用も可能です。ジプニーはフィリピン各地で広く利用されている乗り合いの小型バスです。

マラウィ市は、その歴史、文化、そして自然環境が複雑に絡み合った都市です。2017年の戦闘によって傷つきながらも、独自の文化と歴史を継承し、発展を続ける、魅力的な都市と言えるでしょう。

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