バンサモロ自治地域

バンサモロ自治地域（BARMM）とは

バンサモロ自治地域（Bangsamoro Autonomous Region in Muslim Mindanao, BARMM）は、フィリピンのミンダナオ島西部からスールー諸島にかけて広がる、イスラム教徒（ムスリム）が多数を占める地域に2019年に設立された自治地域です。この地域は、フィリピン国内で唯一、独自の「政府」を持つ特別な存在です。キリスト教徒が多数を占めるフィリピンにおいて、特異な歴史と文化を育んできましたが、経済的には貧困層が多く、治安も不安定な状況が続いています。

成立の背景

BARMMは、1990年に設立されたイスラム教徒ミンダナオ自治地域（ARMM）に代わるものとして、フィリピン政府とモロ・イスラム解放戦線（MILF）との間の和平合意に基づいて設立されました。この和平合意は、長年にわたる紛争を終結させるための重要なステップでした。

構成

BARMMは以下の州と地域で構成されています。

バシラン州（イサベラ市を除く）
ラナオ・デル・スル州
北マギンダナオ州
南マギンダナオ州
タウィタウィ州
コタバト州の一部（Special Geographic Area、北西部の町村に属する63のバランガイ）
(スールー州: 2024年9月9日のフィリピン最高裁判所の判決により、離脱予定)

スールー州は住民投票で自治地域への参加を拒否しましたが、設立当初から事実上自治地域の一部として扱われていました。しかし、2024年9月9日にフィリピン最高裁判所がスールー州は自治地域に含まれないと宣言したため、最終判決後には離脱することになります。

歴史的経緯

ミンダナオ島、特にその西部地域は、フィリピンの他の地域とは異なる歴史を歩んできました。15世紀にはイスラム教が広まり、スルタン国が誕生するなど、独自の文化とアイデンティティを築いてきました。スペインによる植民地化が進む中でも、ミンダナオ西部のスルタンたちは独立を保ち、スペインの侵攻に対抗しました。

19世紀後半にはスペインの支配下に入りましたが、その支配は限定的なものでした。その後、アメリカの植民地時代を経て、フィリピンが独立すると、政府は国民を統合しようとしましたが、ムスリムの人々はこれを同化政策とみなし反発しました。

1970年代から、モロ民族解放戦線（MNLF）による分離独立運動が始まり、フィリピン国軍との間で武力衝突が繰り返されました。1986年のエドゥサ革命後、政府はムスリムとの対話を模索し、1989年にムスリム自治区を設けるための憲法上の根拠ができました。

しかし、自治地域への加入を巡る住民投票の結果、一部の州のみが加入し、不完全な自治に終わりました。その後も、モロ・イスラム解放戦線（MILF）との和平プロセスが断続的に行われましたが、武力衝突も絶えませんでした。

バンサモロ自治地域の設立

2012年、フィリピン政府とMILFは和平合意のための枠組み合意に署名し、2014年には包括合意が締結されました。この合意に基づき、バンサモロの法的地位を定めるためのバンサモロ基本法が制定されることになりました。

2018年、ドゥテルテ大統領がバンサモロ基本法に署名し、2019年には住民投票を経てバンサモロ自治地域が正式に成立しました。これにより、長年にわたる紛争に終止符が打たれ、新しい自治地域が誕生しました。

現状と課題

BARMMは、フィリピンの中で最も貧しく、治安も不安定な地域の一つです。経済発展やインフラ整備、教育の向上など、多くの課題が残されています。また、平和構築のための取り組みも重要です。

BARMMの設立は、ミンダナオ島における平和と安定に向けた大きな一歩です。しかし、真の平和を実現するためには、地域住民の生活向上や政府の持続的な支援が不可欠です。

関連事項

バンサモロ枠組み合意
バンサモロ包括合意
フィリピンとバンサモロの和平プロセス
* バンサモロ移行委員会

注釈

本記事は、現時点での情報に基づき作成されています。今後の状況変化により、内容が変更される可能性があります。

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