マラク・ターウース

マラク・ターウースとは

マラク・ターウース（Melek Taus）は、イラクに住むクルド人の少数派、ヤズィーディー教徒によって崇拝されている重要な存在です。彼は孔雀の形をした天使であり、その名はアラビア語で「孔雀の天使」とも解釈されます。ヤズィーディー教は一神教であり、マラク・ターウースはその中で七大天使の一人とされていますが、彼自身は神ではなく、信仰の対象として重要な役割を果たしています。

名称と意義

「ターウース」という言葉は、アラビア語で孔雀を指し、「マラク」は天使を意味します。言葉の形からもわかるように、彼は「孔雀の王」としての解釈もあります。このような呼称は、彼の重要性を物語っており、ヤズィーディー教徒にとって彼の存在は特別な意味を持つのです。

創世神話

ヤズィーディー教の創生神話によると、マラク・ターウースは世界の創造の第一日に誕生したとされています。彼は一万年もの間、地上を治める存在であり、今から約6000年前にはその支配を始めたと考えられています。しかし、彼は反逆の罪によって一度地獄に落ちることになります。ただし、その後許され、神とともにアダムを創ったとされています。

マラク・ターウースはアダムに禁断の麦を食べさせるよう神に許可されます。この点がクルアーンに記載されているシャイターン（悪魔）との類似点として指摘されることも多いです。これにより、マラク・ターウースはイスラム教徒からしばしば悪魔視されることがあり、彼の真意が誤解される原因ともなっています。

創作への影響

マラク・ターウースは多くの文学作品や創作物に影響を与えています。特に、ロバート・E・ハワードの怪奇クトゥルフ小説『墓はいらない』では「マリク・タウス」という名で登場し、呪われた場所に住む孔雀の魔王として描かれています。このように、彼は様々な形で創作のインスピレーションとなっています。

また、荻野真の漫画『孔雀王』では、密教における孔雀明王やキリスト教におけるルシファーと同一視され、主人公がマラク・ターウースの生まれ変わりとして描かれています。このような文化的な描写によって、彼の持つ神秘性や象徴性がより深く掘り下げられています。

結論

マラク・ターウースは、ヤズィーディー教徒にとって重要な信仰対象であり、その存在は信仰の枠を超えて現代の文学やアートに広がっています。彼の物語は複雑でありながらも魅力的で、多様な解釈の余地があります。彼を通じて、信仰の持つ深い意味や人間の内面に迫る視点を考えることができるのです。

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