マリア・ルイサ・デ・ボルボーン・イ・バリャブリガの肖像

この作品は、スペインの画家フランシスコ・デ・ゴヤによって1800年頃に描かれた肖像画です。彼はロマン主義の巨匠であり、この絵はその代表的な作品の一つとして知られています。この絵に描かれているのは、スペイン・ボルボン朝の国王フェリペ5世の孫娘、マリア・ルイサ・デ・ボルボーン・イ・バリャブリガです。

作品の背景

この肖像は、長い間誤って姉のマリア・テレサ・デ・ボルボーン・イ・バリャブリガのものとされていましたが、のちに正しく認識されました。現在、この作品はイタリア・フィレンツェのウフィツィ美術館に所蔵されています。

マリア・ルイサの人生

マリア・ルイサは1783年に生まれました。父親はルイス・アントニオ・デ・ボルボーンで、母親はアラゴンの下級貴族出身のマリア・テレサ・デ・バリャブリガ・イ・ロサスです。父がフェリペ5世の子供であったことから、彼女の家族は一時的に政治的な隠遁生活を強いられました。1785年に父親が亡くなると、彼女は姉と共にトレドの修道院に送られました。

彼女の人生は1797年以降に大きく変わります。姉のマリア・テレサがカルロス4世の宰相であるマヌエル・デ・ゴドイと結婚したことで、家族は王室に復帰することが認められました。1799年に修道院を離れた後、母親とともにサラゴサに移り住みました。スペイン内戦が発生すると、母と共にパルマ・デ・マヨルカに移りますが、気候が合わずカディスに避難しました。

その後、1817年にホアキン・ホセ・デ・メルガレホ・イ・サウリンと結婚し、1819年には夫がスペインの首相に就任したため、マリア・ルイサは当時の著名な女性となります。しかし、フランスの介入により政権が崩壊し、夫妻はパリへと亡命を余儀なくされました。1834年にスペインに帰国した後、マリア・ルイサは1846年にこの世を去りました。

作品の詳細

ゴヤのこの肖像画では、マリア・ルイサの全身像が描かれています。彼女は四分の三正面を向き、魅惑的な微笑を浮かべて鑑賞者を見つめています。彼女が着ているのは、透明感漂うピンクのエンパイア様式のドレス。ブロンドの巻き毛は白い羽根のついた頭飾りでまとめられ、イヤリングやミニアチュール肖像画が付いたブレスレットなどの豪華な装飾品が施されています。また、彼女は左手に扇を持ち、ドレスの結び目の下には特別な勲章が輝いています。この作品は、柔らかなタッチと繊細な質感が見事に表現されています。

2008年には、展覧会「ゴヤとイタリア」のために修復作業が行われ、古い修復が取り除かれました。さらに、X線撮影により、キャンバスの下部に別の頭部の素描が存在することが確認されました。この素描は、ゴヤの他の作品とも関連性があると指摘されています。

作品の来歴

マリア・ルイサの人生は多くの変化を経て、1835年に亡くなった夫の遺言により、姪のカルロッタ・ルイサが彼女の絵画コレクションを相続することになりました。この作品もコレクションの一部としてボアディージャ・デル・モンテの宮殿に保管されていました。最終的には、1904年にフィレンツェに移され、1972年にウフィツィ美術館に収蔵されました。

この肖像画は、時間を超えて多くの人にその美しさと歴史的価値を伝える貴重な芸術作品となっています。

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