マリナー4号

マリナー4号：人類初の火星フライバイ探査機

マリナー4号は、アメリカ航空宇宙局（NASA）が実施したマリナー計画の4番目の探査機であり、1964年11月28日に打ち上げられました。このミッションの最大の目標は、火星のフライバイを行い、その表面の画像を地球に送信することでした。マリナー4号は、史上初めて火星の近傍を通過し、その表面の画像を撮影した探査機として、宇宙探査史にその名を刻みました。

探査機の構造と搭載機器

マリナー4号は、八角形のマグネシウム製筐体を持ち、その対角は1270mm、高さは457mmでした。筐体の上部には4枚の太陽電池パネルが取り付けられており、展開時の全長は6.88mにも及びました。また、直径1168mmの高利得パラボラアンテナが搭載されており、探査機全体の高さは2.89mでした。探査機の中央部には走査プラットフォームがあり、テレビカメラが取り付けられていました。

マリナー4号に搭載された主な科学機器は以下の通りです。

テレビカメラ：火星表面の画像を撮影し、デジタル変換して地球に送信。
磁力計：火星の磁場を測定。
ちり検知器：宇宙空間の塵を検出。
宇宙線検知器：宇宙線を検出。
捕捉放射線検出器：放射線を検出。
太陽プラズマ検知器：太陽風を測定。
* 電離箱/ガイガーカウンター：宇宙線の量を測定。

これらの機器によって、火星の様々な科学的データが得られました。

ミッションの概要

マリナー4号は、打ち上げ後、地球のパーキング軌道に入り、その後火星へのトランスファ軌道へと移行しました。約7ヶ月半の飛行を経て、1965年7月14日 - 15日に火星に最接近しました。この際、赤と緑のフィルターを用いて21枚の画像が撮影されました。当初、画像はほぼ真っ白だったため、画像処理を行った結果、クレーターが多数存在する火星表面の様子が明らかになりました。

画像撮影範囲は、火星表面の約1%を占め、クレーターが多数存在する地形であることが判明しました。最接近時の火星表面からの距離は9,846kmでした。フライバイ中に撮影された画像は、一旦探査機内のテープレコーダーに記録され、その後地球に送信されました。

マリナー4号は、予定されていた全ての活動を順調にこなし、有用なデータを地球に送信しました。しかし、地球からの距離が遠くなったことやアンテナ方位の問題から、1965年10月1日に一時的に信号が途絶しました。

流星塵衝突とミッション終了

1967年後半にデータ収集が再開されましたが、9月には流星群のような衝突が複数回発生し、探査機の姿勢が一時的に変化しました。この衝突は、D/Swift彗星の破片によるものと推測されています。12月には姿勢制御システム用のガスを使い果たし、流星塵の衝突も相次いだ結果、1967年12月21日にマリナー4号からの通信が途絶しました。

成果と影響

マリナー4号のミッションを通して、合計520万ビットのデータが送信されました。火星の表面にはクレーターが多数存在することが判明し、大気圧は4.1〜7.0mb（410〜700パスカル）と非常に薄いこと、昼間の気温は摂氏-100度と極寒であることが明らかになりました。また、磁場は検出されませんでした。

これらの観測結果は、火星が生命にとって非常に過酷な環境であることを示し、それまで存在した火星の知的生命体に対する期待を打ち砕くものでした。しかし、その後の探査によって、生命が存在する可能性は完全には否定されておらず、現在も研究が進められています。

マリナー4号の成功は、その後の火星探査の礎となり、惑星探査における重要な一歩となりました。

マリナー4号ミッションの費用

マリナー4号のミッション総経費は、8320万ドルと見積もられています。マリナー探査機シリーズ全体（1号から10号まで）の研究、開発、打ち上げ、支援には、約5億5400万ドルの経費が掛かりました。

このミッションは、人類の宇宙探査の歴史における重要なマイルストーンであり、その後の惑星探査に大きな影響を与えました。

もう一度検索