マリヤン・シャレツ

マリヤン・シャレツ：コメディアンから首相へ、異色の政治家

マリヤン・シャレツ（Marjan Šarec）は、1977年12月2日生まれのスロベニアの政治家、俳優、そしてコメディアンです。現在は欧州議会議員として活躍していますが、これまでにスロベニアの首相、国防大臣、そして自身が率いるマリヤン・シャレツ・リスト（LMS）の党首を歴任しました。

コメディアンから政界へ

シャレツは、政治風刺を得意とするコメディアンとしてそのキャリアをスタートさせました。スロベニア国営放送のテレビやラジオ番組に出演し、辛辣なユーモアで政治を批判。特に、ゴレンスカ地方出身の嫌味な田舎者、イヴァン・セルペンティンシェクというキャラクターは、国民的な人気を博しました。また、ヤネス・ドルノウシェク元大統領や、オサマ・ビンラディンといった国内外の著名人の物真似も得意としていました。

コメディアンとして活躍する傍ら、シャレツはジャーナリストや編集者としても活動していました。そして2010年、彼は故郷であるカムニークの市長選に立候補。スロベニアでは芸能人が政界に進出する例は極めて稀でしたが、シャレツは市民の支持を集め、見事市長の座を射止めました。市長就任後は、公務に専念するため芸能活動から引退しました。

2014年には、自身が結成した政党「マリヤン・シャレツ・リスト」を率いて統一地方選に臨み、圧勝。市長として再選を果たしました。

大統領選への挑戦と首相就任

2017年、シャレツは大統領選への立候補を表明します。現職大統領のボルト・パホルを「単なる名士」と批判し、若年層や左派からの支持を集めました。しかし、決選投票ではパホルに敗れ、大統領の座を掴むことはできませんでした。

2018年、シャレツはLMSを率いて総選挙に臨み、12.6%の得票率で13議席を獲得。国会で第二勢力となりました。そして同年8月17日、左派5政党による連立政権を樹立し、首相に就任しました。

短命に終わった首相時代

しかし、シャレツ政権は少数与党であり、リーダーシップを発揮することが難しい状況が続きました。2019年11月には、野党の協力も得られなくなり、法案の可決が困難に。さらに、2020年1月には、医療制度に関する法案を巡り財務大臣が辞任したことが引き金となり、シャレツ自身も首相を辞任することになりました。後任には、ヤネス・ヤンシャが就任しました。

現在

2022年には国防大臣に就任。2024年6月には欧州議会議員選挙で当選し、同年7月16日に議会が招集されたことを受け国防大臣を退任しました。

マリヤン・シャレツは、コメディアンから市長、そして首相へと異例のキャリアを歩んだ政治家です。そのユーモアのセンスと政治手腕で、スロベニア政界に独自の足跡を残しています。

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