欧州議会議員

欧州議会議員：欧州連合を動かす人々

欧州議会議員は、欧州連合（EU）の立法機関である欧州議会を構成する議員です。EU加盟各国から選出され、各国議会の議員と同様に、重要な役割を担っています。フランスやイタリアなど一部の国では、「欧州代議士」と呼ばれることもあります。

歴史と選挙制度

欧州議会設立当初は、議員は加盟国政府によって任命されていました。しかし、1979年以降は直接選挙で選出されるようになり、民主的な意思決定の基盤が確立されました。

現在、欧州議会議員の数は751名（2014年5月以降）で、5年に1度、普通選挙によって選出されます。選挙制度は加盟国ごとに異なりますが、比例代表制を基本とし、いくつかの共通原則を遵守しています。具体的には、政党名簿比例代表または単記移譲式投票による比例代表制、選挙区の細分化（比例代表制の性質に大きな影響を与えない範囲）、最低得票率（5%以内）の設定などです。

各国の議席数は、人口規模を考慮した逓減比例で配分されていますが、人口の少ない国には、厳密な配分よりも多くの議席が割り当てられています。議席配分の変更には、全加盟国政府の承認が必要です。

議員の入れ替わりと会派

欧州議会では、国内議会と比較して議員の入れ替わりが大きいです。2009年の選挙では、初めて欧州議会議員となった議員が全体の約50%を占めました。一方、1979年の最初の直接選挙から議員を務めているのは、わずか1名だけです。

ほとんどの議員は、同様の政治思想を持つ各国の政党が組織する院内会派に所属しています。しかし、欧州議会の会派は、国内議会のそれとは大きく異なり、議員は「あらゆる負託に拘束されない」とされています。そのため、会派の規則の拘束力は比較的弱く、個々の議員や議員団が会派の方針に反する行動をとることも珍しくありません。会派の意思決定も、執行部ではなく、会派内の議論で決められます。そのため、役職を持たない議員にも大きな影響力があります。

議員の権限と職務

欧州議会議員には、決議案の提案、質問権、法案修正提案権、投票説明権、議事進行提案権、事案却下提案権など、多くの権限が保障されています。

議員の職務は多忙を極めます。ストラスブールでの本会議、ブリュッセルでの委員会や会合への出席、地元選挙区との関係維持など、多くの時間を費やす必要があります。特に、議会と選挙区間の距離が長いため、その負担は国内議員よりも大きいです。多くの議員は、選挙区での活動のために多数のスタッフを雇用しています。

多くの欧州議会議員は、家族との時間を確保するため、自宅をブリュッセルに構えています。また、欧州議会議員の権限は国内議員に比べて小さいため、出身国内での公職経験は比較的少ない傾向にあります。

歳費・経費

欧州議会議員の歳費は、出身国の議会下院議員と同額です。そのため、国によって大きな差がありましたが、2005年には歳費規程が単一化され、2009年以降は月額7,000ユーロが支払われるようになりました。

経費については、支払額や支払方法について批判があります。特に、地元とブリュッセル間の航空運賃については、実際に支払われた額に関係なく通常料金を支給するなど、問題点が指摘されています。また、監査制度についても不十分であるという批判があります。

歳費・経費支出の制度については、欧州議会が再三にわたって改善を提案し、2005年にようやく改革が行われました。現在、各議員は収入や支出に関する会計報告を毎年公表し、インターネット上で公開しています。

免責

欧州議会議員は、出身国では国内議員と同等の待遇を受け、他の加盟国でも、現行犯逮捕を除き、身柄拘束や司法措置を受けない特権を持っています。

議員の経歴と兼職

欧州議会議員には、国内議員や閣僚の経験者が多い一方で、裁判官、労働組合代表、ジャーナリスト、俳優、スポーツ選手など、多様な経歴を持つ人物も含まれています。中には、宇宙飛行士、元首相、著名な政治家、俳優、スポーツ選手などもいます。

国内議会と欧州議会の議員を兼職することは、一般的には推奨されていませんが、一部の議員は兼職している例もあります。

多様性

2019年の選挙では、女性議員の割合が41%に達し、1979年の16.5%と比較して大きく増加しました。年齢層も幅広く、最年長と最年少の年齢差も大きいです。

オブザーバ

EU加盟が内定している国は、加盟前にオブザーバを欧州議会に派遣します。オブザーバは議論に参加できますが、投票権などはありません。加盟後、次の選挙までオブザーバは正式な欧州議会議員となります。そのため、一時的に定数が超過することもあります。北キプロスからのオブザーバ派遣については、議論が続いています。

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