マリー・ローランサン

マリー・ローランサン：20世紀を彩ったフランス人女性画家の生涯と芸術

マリー・ローランサン（1883年10月31日 - 1956年6月8日）は、20世紀前半、フランスで活躍した画家であり、彫刻家でもあります。パリで生まれ育ち、アカデミー・アンベールで絵画を学んだ彼女は、キュビスムの先駆者であるジョルジュ・ブラックと出会い、その影響を受けました。しかし、ローランサンの芸術はキュビスムに留まらず、独自の繊細で優美な画風を確立しました。

華やかなパリ社交界と芸術家たちとの交流

ローランサンは、パリの芸術シーンの中枢にいました。モンマルトルのアトリエ「バトー・ラヴォワール」では、パブロ・ピカソや詩人で美術評論家のギヨーム・アポリネールらと交流を深め、アポリネールとは恋愛関係にありました。アポリネールとの出会いは、彼女の芸術人生に大きな影響を与えたと言えるでしょう。1908年と1909年には、アポリネールとその友人たちを描いた作品を発表しています。アポリネールがモナリザ盗難事件の容疑者として拘留されたことで、二人の関係は終焉を迎えますが、アポリネールはその後もローランサンへの想いを詩に託しています。代表作である「ミラボー橋」はその一例です。

上流社会からの支持と多様な活動

ローランサンは、パリの上流階級の女性たちに肖像画を依頼されるなど、絶大な人気を博しました。ココ・シャネルの肖像画は、現在もオランジュリー美術館に所蔵されています。絵画制作のほかに、舞台装置や衣装デザインも手がけるなど、その才能は多岐に渡っています。

戦争と亡命、そして晩年

第一次世界大戦の勃発により、ドイツ人男爵と結婚していたローランサンは、マドリード、バルセロナへと亡命を余儀なくされました。戦後パリに戻った彼女は、離婚後も精力的に創作活動を続けました。第二次世界大戦中には、自宅を接収されるなど困難な時期も経験しましたが、創作を諦めることはありませんでした。1954年にはシュザンヌ・モローを養女に迎えました。72歳で亡くなるまで、ローランサンは芸術家としての人生を全うしました。

マリー・ローランサン美術館：コレクションと変遷

長野県茅野市の蓼科湖畔に存在したマリー・ローランサン美術館は、世界で唯一のローランサン専門美術館として知られていました。東京のタクシー会社・グリーンキャブ創業者の高野将弘氏のコレクションを基に設立され、1983年のローランサン生誕100周年に開館しました。しかし、観光客の減少により2011年に閉館。その後、日本各地を巡回した後、東京で再オープンするも、再び閉館しました。現在は、600点を超えるコレクションを所有しており、展覧会への貸し出しや情報発信を続けています。

代表作

ローランサンの代表作には、『アポリネールとその友人たち』（1908年、1909年）、『The Dreamer』（1910年-1911年）、『二人の少女』（1915年）、『シャネル嬢の肖像』（1923年）、『接吻』（1927頃）などがあります。これらの作品は、彼女の繊細な画風と、時代背景を反映した独特の世界観を伝えています。また、ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』の挿絵なども手がけています。

ローランサンの芸術的遺産

マリー・ローランサンは、キュビスムという革新的な芸術運動の影響を受けながらも、独自の優美な画風を確立した希有な女性画家です。彼女の作品は、20世紀前半のパリという華やかな時代と、その中で生きた女性芸術家の姿を鮮やかに描き出しています。数々の困難を乗り越え、創作活動を続けた彼女の生涯と芸術は、現在も人々に感動と共感を与え続けています。彼女の作品は、現在も世界中の美術館やコレクターによって大切に保存され、鑑賞されています。 彼女の芸術的遺産は、今後も多くの研究者や芸術家、そして鑑賞者によって受け継がれていくことでしょう。

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