マルクス一番乗り

『マルクス一番乗り』（原題：A Day at the Races）は、1937年に公開されたアメリカ映画で、マルクス兄弟がMGMと組んで制作した2作目の作品です。前作『オペラは踊る』に続く大ヒットを記録し、マルクス兄弟のコメディ映画史における重要な作品となりました。

本作の舞台は、競馬場のすぐそばにある経営難の診療所です。診療所のオーナーであるジュディは、裕福な患者であるアプジョウン夫人の強い希望で、名医ハッケンブッシュ博士を呼び寄せます。しかし、このハッケンブッシュ博士は、田舎で馬の治療をしていた全くの凡庸な男でした。アプジョウン夫人は、博士が自分の病気を治してくれれば、診療所に資金援助を行うと約束します。

一方、ジュディの恋人である売れない歌手ギルは、運転手のトニイと、騎手のスタフィと協力して、名馬「ハイ・ハット」を購入し、レースで賞金を獲得してジュディを助けようと画策します。しかし、診療所の乗っ取りを企む債権者モーガンは、ハッケンブッシュ博士の正体を暴こうと画策し、さらにギルたちの計画を阻止しようと様々な妨害を仕掛けます。

マルクス兄弟の3人は、それぞれ個性的なキャラクターを演じています。グルーチョ・マルクスは、いかさま医師であるハッケンブッシュ博士をコミカルに演じ、チコ・マルクスは、機転の利く運転手トニイを、ハーポ・マルクスは、少し間抜けな騎手スタフィを演じています。

この映画には、マルクス兄弟以外にも多くの魅力的なキャラクターが登場します。ジュディ役にはモーリン・オサリバン、ギル役にはアラン・ジョーンズ、アプジョウン夫人役にはマーガレット・デュモン、そして、悪役モーガン役にはダグラス・ダンブリルといった豪華なキャストが脇を固めます。

監督は、前作『オペラは踊る』に引き続きサム・ウッドが務め、脚本にはロバート・ピロッシュ、ジョージ・シートン、ジョージ・オッペンハイマーが参加しています。音楽は、ブロニスラウ・ケイパー、ワルター・ユルマン、フランツ・ワックスマンといった著名な作曲家が担当しています。

『マルクス一番乗り』は、マルクス兄弟独特のテンポの良いユーモアと、スリリングな展開が絶妙に絡み合った傑作コメディです。競馬という舞台設定も、彼らのコミカルな演技と見事にマッチしており、観客を飽きさせません。

そして、この映画は、単なる喜劇映画にとどまりません。経営難の診療所、金に困窮する恋人たち、そして、野心的な悪役という、現実社会の問題も巧みに取り入れています。これらの要素が、コメディというエンターテイメント性の中に溶け込み、観る者に考えさせる余地を残しています。

2000年には、アメリカン・フィルム・インスティチュートのリスト『アメリカ喜劇映画ベスト100』にランクインするなど、高い評価を受けています。時代を超えて愛される名作として、現代においても高い人気を誇っています。その独特のユーモアと、見事なストーリー展開は、多くの観客を魅了し続けています。マルクス兄弟ファンはもちろんのこと、コメディ映画好きなら、ぜひ一度鑑賞することをお勧めします。

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