オペラは踊る

『オペラは踊る』(1935): マルクス兄弟最大のヒット作

『オペラは踊る』（原題: A Night at the Opera）は、1935年に公開されたアメリカのコメディ映画。マルクス兄弟にとってメトロ・ゴールドウィン・メイヤー（MGM）での第一作であり、彼らのキャリアにおける最大の成功作として知られています。

制作の背景

前作の失敗によりパラマウント社との契約を打ち切られたマルクス兄弟でしたが、チコ・マルクスの縁故からMGMの名プロデューサー、アーヴィング・タルバーグに才能を見出され、MGM入りを果たします。破格の条件で迎えられた彼らは、入念な準備期間を経て本作に取り組みました。また、この作品からゼッポ・マルクスがグループを離れ、以降は3人組として活動しています。

内容と評価

本作では、従来のマルクス兄弟作品に見られたアナーキーな要素は抑えられ、代わりに音楽と笑いを融合させた、より分かりやすいエンターテイメント作品となっています。タルバーグのサポートに加え、公開前に175回もの舞台巡業を行い、観客の反応を見ながらギャグを磨き上げるという徹底した制作姿勢が、作品の完成度を高めました。特に、狭い船室に大勢の人間が詰め込まれるシーンは、バスター・キートンのアイデアによるもので、そのナンセンスなユーモアは、ダリをはじめとするシュルレアリスムの芸術家からも高く評価されました。グルーチョ・マルクス自身も、本作を自身の最高傑作と評しています。

1993年には、アメリカ国立フィルム登録簿に登録され、文化的、歴史的、芸術的に重要な作品として保護されています。

あらすじ

舞台はイタリアのミラノ。詐欺師のドリフトウッド（グルーチョ・マルクス）は大富豪の未亡人を騙し、オペラのアメリカ巡業の資金を手に入れます。ドリフトウッド率いる一座は、意気揚々とアメリカ行きの船に乗り込みますが、そこには無名の歌手とそのマネージャー、そして助手が紛れ込んでおり、船内は大混乱に陥ります。なんとかアメリカに到着した一座は、オペラ「イル・トロヴァトーレ」の公演初日を迎えることになりますが...

キャスト

オーティス・B・ドリフトウッド：グルーチョ・マルクス
フィオレッロ：チコ・マルクス
トマッソ：ハーポ・マルクス
ローザ・カステルディ：キティ・カーライル
リカルド・バローニ：アラン・ジョーンズ
ロドルフォ・ラスパッリ：ウォルター・ウルフ・キング
クレイプール夫人：マーガレット・デュモント

スタッフ

監督：サム・ウッド
製作：アーヴィング・タルバーグ
脚本：ジョージ・S・カウフマン、モリー・リスキンド
音楽：ハーバート・ストサート
撮影：メリット・B・ガースタッド

その他

ロックバンド「クイーン」のアルバム『オペラ座の夜 A Night at the Opera』のタイトルは、本作に由来しています。
劇中劇として、ジュゼッペ・ヴェルディ作曲のオペラ『イル・トロヴァトーレ』が用いられています。

ランキング

1967年：「映画史上のコメディ・ベスト10」第3位（カナダ、オタワの映画保存協会が世界40か国の批評家のアンケートにより選出）
2022年：「史上最高のコメディー映画ベスト100」（英『タイムアウト』誌発表）第33位

もう一度検索