マルクチヒメジ

マルクチヒメジ (Parupeneus cyclostomus)

概要

マルクチヒメジはヒメジ科に属する海水魚で、インド洋や太平洋の熱帯・亜熱帯域に広く分布しています。この魚は主に岩礁やサンゴ礁の周囲で見られ、最大で50cmの体長に達することもありますが、一般的には30cm程度の個体が見かけられます。体色は多様であり、黄色、青色、紺色など、さまざまな色合いを持っています。また、全身が鮮やかな黄色の個体は「オウゴンヒメジ」とも呼ばれていました。マルクチヒメジは長いヒゲを使って感覚情報をつかみ、他の魚や甲殻類などを捕食します。観賞魚としての人気も高く、家庭で飼育されることもあります。

分類・命名

この魚は顎口上綱、硬骨魚綱、ヒメジ科に属し、現在有効な学名はParupeneus cyclostomusです。「cyclostomus」という種小名はギリシャ語で「円い口」を意味し、和名の「マルクチ」は「円口」とも表記され、円形の口が獲物を捕らえる様子に由来しています。

形態

マルクチヒメジの体形は細長く、少し側偏しています。吻長は頭部の長さの半分以上あり、背鰭は二つの部分に分かれています。第一背鰭には8本の棘条があり、第二背鰭には1本の棘条と8本の軟条が存在します。また、臀鰭と胸鰭にもそれぞれ特徴的な構造があります。特に顎にある二本の長いヒゲは、ヒメジ科の中でも最も長く、餌を探すのに役立っています。背鰭の後ろには黄色い鞍状の斑点があり、成長と共に不明瞭になることがあります。体色は白色から黒色までさまざまで、自由に変化する傾向があります。

分布

マルクチヒメジは広い範囲に生息しており、西側では南アフリカやインド、東側では日本やオーストラリア、さらにはハワイ諸島やマルキーズ諸島などに分布しています。日本では、伊豆半島以南の太平洋沿岸や琉球列島で多く観察され、特に幼魚は本州でも見かけられますが、成魚は主に奄美大島以南に生息しています。水深2mから125mまでの環境で見られ、岩礁やサンゴ礁、砂底、ラグーンなど多様な生息環境に適応しています。

生態

マルクチヒメジは肉食性で、主に魚類や甲殻類、頭足類を食べます。特に魚が食事の70％を占めるため、ヒメジ科の中でも高い割合の肉食性を示しています。普段は単独または小さな群れで行動し、時には他の魚と一緒に群を形成することもあります。エジプトでの研究によると、単独の個体は砂底で獲物を探す傾向があり、群れを作る個体はサンゴ礁で活発な獲物を狙うことがわかりました。特に群れ内では協力行動が観察され、一匹が獲物を発見すると、他のメンバーがその逃げ道をふさぐことで、獲物を捕まえやすくするのです。また、ヒゲの先端にある味蕾を使って餌を探し、岩の隙間から獲物を引き出すことも行います。

人間との関係

マルクチヒメジは漁業の対象となっており、主に追い込み網で捕獲されます。食用としても利用されますが、観賞魚としても人気があります。美しい外見と興味深い生態を持つことから、多くの人々に愛され続けています。

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