マルス96

マルス96：失敗に終わった火星探査計画

マルス96（ロシア語: Марс-96）は、1996年11月にロシア宇宙軍が打ち上げた火星探査プロジェクトですが、悲しいことに打上げは失敗に終わりました。曖昧さを避けるために言うと、マルス96は過去のマルス計画とは直接の関係がなく、単に同じ名前を冠しているのみです。この探査機は、ロケットの4段目の再点火に失敗するという不運に見舞われ、最終的にその本体ごと地球の大気圏に再突入し、太平洋上に落下しました。これにより、火星探査の期待が打ち砕かれたのです。

この計画は基本的に1988年に打ち上げられたフォボス計画の2機の探査機を基に設計されました。これらの探査機は新しい設計手法を採用していたものの、最終的には両方共に失敗に終わってしまいました。設計者たちはマルス96に向けて改善点を満たす自信がありましたが、打上げの失敗によりその成果を証明する機会は訪れませんでした。

とはいえ、マルス96には火星探査機の打ち上げだけでなく、火星の表面に地上局を設置したり、衝突貫入体による実験を行うという非常に野心的な目標が含まれていました。このプロジェクトには、フランスやドイツをはじめとする複数の欧州諸国やアメリカからも協力を受けており、それぞれの国の計器が搭載されていました。しかし、マルス96の失敗によりこれら計器は打上げられることはなく、後に2003年に打ち上げられたマーズ・エクスプレスで同様の計器が使用されることになりました。

科学的目標

マルス96は火星の理解と、その変化の歴史を解明するための科学的目標を設定していました。これには、火星の表面、大気、内部構造に関する詳細な分析が含まれており、さまざまな研究カテゴリーに分かれていました。

• - 地表の研究: 火星の地形観測、鉱物マッピング、土壌成分分析、両極地域の深層構造研究などが行われる予定でした。
• - 大気の研究: 火星の気候、特定元素の存在量、水や二酸化炭素、オゾンなどの化学物質の存在の追跡、全球的な気圧変動などについて調査する計画でした。
• - 内部構造の研究: 地殻の厚さ調査、火星の磁場研究、熱流速、火山の活動状況、そして地震活動などを対象とした内容です。
• - プラズマ研究: 磁場やプラズマイオンのエネルギー構成、惑星間航行中と火星近辺でのプラズマ動態などの研究が行われる計画でした。
• - 天体物理学研究: 宇宙ガンマ線バーストや太陽の変動に関する調査が航行中に予定されていました。

設計

マルス96の設計は、3軸安定化機構を持ち、フォボス計画に基づいた衛星部分を特色としていました。それには高利得アンテナや大型ソーラーパネルが搭載され、地上局、ペネトレータなども含まれています。各地上局は、火星表面での科学実験やデータ収集を行うための機器を装備しており、特に火星探査を意識した設計が施されていました。

このように、マルス96は非常に多くの先進的な機器や実験を搭載して火星探査への挑戦を行っていましたが、残念ながらその運命は予定通りには進まなかったのです。

ミッション失敗と放射性物質の行方

打ち上げは1996年11月16日に行われましたが、最終的に4段目ロケットの再点火が失敗し、宇宙機は地球に墜落しました。当初、宇宙機は地球大気圏で破壊されると考えられていましたが、その後の調査によると、実際にはチリ付近に墜落した可能性が高いとされています。マルス96には放射性物質が搭載されており、ロシアはこれらを回収する努力をしておらず、未だに行方不明です。

マルス96以降のミッション

マルス96の失敗を受けて、後にESAのマーズ・エクスプレスが成功裏に打ち上げられ、火星探査を行っていますが、マルス96の技術を元とした他のミッションは中止や延期となっています。このように、マルス96は火星探査の歴史において重要な教訓を提供しました。

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